日立のロボットが、インバウンド対策も視野に入れ、横浜に初導入

EMIEW3という日立のロボットが初めて正式導入された。Pepperやロボホンなどとの違いは?
 日立製作所のコミュニケーションロボット「EMIEW3」(エミュースリー)が、横浜市みなとみらいの横浜ランドマークタワーに導入された。2018年12月11日から本格運用が開始される。「EMIEW3」が正式導入されるのは今回が初めてとなる。

日立のロボットが、インバウンド対策も視野に入れ、横浜に初導入
写真:アスキー
 日立製作所のEMIEW3は、2016年4月に開発されたコミュニケーションロボットで、本体にはCPUを搭載せず、ロボットIT基盤と連携して動作するリモートブレイン構成を採用することで、柔軟な拡張と業務システムとの連携を行うことができるのが特徴だ。多言語会話と自律走行機能を有しているほか、公共空間での利用に求められる雑音環境下での音声認識性能に長けている。
 
 これまでに、三菱地所本社や羽田空港のほか、駅、商業施設などで実証実験を行ってきた。
 
 今回の横浜ランドマークタワーへの正式導入では、69階の展望フロア「スカイガーデン」に3台のEMIEW3を配置。2階の展望フロアチケット売り場には1台の 「EMIEW3」を設置し、日本語、英語、中国語による多言語での施設案内や、チケット購入方法の案内、スカイガーデンからの景色紹介などのほか、クイズゲームなどのエンターテイメント機能や、グループダンスによるスカイガーデン内でのイベントなどにも利用する。
 
 来館者が話しかけると、EMIEW3は、「こんにちは」と挨拶。「スカイガーデンにようこそ。こちらでは、私、EMIEW3がみなさんをご案内します。こちらの北東エリアからは、横浜ベイブリッジや横浜赤れんが倉庫をはじめとする港町・横浜ならではのオーシャンビューをお楽しみいただけます」と、景色を紹介。移動しながら、フロアを案内する。EMIEW3に関する質問や、横浜ランドマークタワーについての質問も受け付ける。質問に関するログも取得しており、質問が多いものや、答えられなかったものは、データのメンテナンスによって対応させることができる。
 
 正面に来た人の話を認識して会話するほか、1時間に1度、3台のEMIEW3が一緒になって、ダンスを披露する。ただ、繁忙期には安全性を考慮して、EMIEW3は動作はさせないという。
 
 また、日立では、EMIEW3の多言語会話機能だけに対応し、受付および接客対応を行うタブレット向けアプリ「EMIEW-TT」を、2018年10月に開発。今回のEMIEW3の正式導入においても、「EMIEW-TT」を、2階展望フロアチケット売り場の横に1台設置して、来場者のチケット購入を支援する。
 
 今回の導入はレンタル方式を採用しているが、導入費用などについては公表していない。なお、EMIEW3の価格は、個別見積もりになっている。
 
 横浜ランドマークタワーの監理を行う三菱地所の横浜支店長である村田修氏は、「スカイガーデンには、今年に入ってから、欧米や中国などからのインバウンド観光客が加速度的に増加しているほか、展望台の性格上、子供から年輩まで幅広い年齢層が訪れるという特徴がある。インバウンド対応の充実とともに、子供たちにも楽しんでもらうことができる。景色の魅力だけでなく、楽しめるコンテンツも提供をしたいと考えている。EMIEW3は親しみやすい外見であり、日本語だけでなく、英語、中国語でもコミュニケーションができる機能を持っている。まだ生まれて2歳のロボットであり、これからの成長が期待できる。導入したロボットは、さらに進化させたい」とコメント。日立製作所 ビルシステムビジネスユニット グローバルソリューション事業部・山本武志副事業部長は、「横浜ランドマークタワーでは、来館者へのおもてなしサービスを行うことになる。人手不足やインバンド対応などの社会課題の解決に向けて、ロボティクス事業を成長させたい」と語った。
 
 また、日立製作所 ビルシステムビジネスユニット グローバルソリューション事業部ロボティクス事業推進部の設楽真一担当部長は、「正式採用が決まるまで2年間を要したが、コミュニケーションロボットの性格上、いかに人とのコミュニケーションを保つかが大切であり、そこに苦心した。また、最初は非常停止ボタンがなかったが、これを加えるなど、安全面においても改良を図ってきた。2年という期間での正式採用は、我々にとってみれば早かったと思っている。今後の販売にも弾みをつけたい。今後の販売計画については様子を見て決めたい」とした。
 
 EMIEW3は、四輪タイプの移動可能なロボットで、頭部には14個のマイクを搭載し、マイクアレイ方式で構成。「施設内のバックミュージックが流れている環境でも、来館者との対話を成り立たせるため、周りの音を除去する仕組みを採用している。頭部正面にある2個のマイクで会話を認識するとともに、周りの12個のマイクで拾った音を、正面のマイクで拾った音から除去。これによって、喋った音をクリアにし、日本語、英語、中国語であることを認識し、それにあわせて回答することになる」(日立製作所 ビルシステムビジネスユニット グローバルソリューション事業部ロボティクス事業推進部の設楽真一担当部長)という。言語対応については、韓国語や欧州の言語にも広げていきたいとしている。
 
 また、EMIEW3には、CPUが搭載されておらず、言語理解や移動指示などは、バックヤードのサーバーから、Wi-Fiを通じて指示を行うのが特徴だ。しかし、人を認知して、立ち止まったり、避けるといった安全機能については、EMIEW3の中に実装している。のど部分にセンサーを搭載しており、周囲の状況を見て移動する。「ライダー(センサー)が内蔵している部分は、高さ70cmであり、そこから下のものは見にくい」という。
 
 デザインには曲面を多く採用。利用者が触れる部分には、ラバー素材を採用して安全性を高めた。
 
 また、足の部分に着脱式のバッテリーを搭載しており、約3時間の連続稼働ができる。バッテリー切れの30分前には、管理者に通知。バッテリーが切れる直前には、ホームポジションに自動的に戻り、停止する。
 
 さらに、15kgという軽量化を図っており、人が持ち上げて移動することも可能である。ただ、来館者などが持ち上げてしまうといったことが起きた場合には管理者に通知。安全性にも配慮している。
 
 なお、EMIEW3には、倒れた場合に自動的に起きあがる機能を搭載しているが、「今回の場合には、小さな子供が訪れる公共的な空間ということもあり、子供が起きあがったEMIEW3を、また倒して遊んでしまうということも想定されるため、自動的に起きあがる機能を取り外している。倒れたときには管理者に通知するようにしている」という。
 
 三菱地所は、日立製作所と日立ビルシステムの協力を得て、東京・大手町の同社本社に、EMIEW3を試験導入。2018年2月14日~16日の3日間、音声対話機能と自律移動機能を活用した受付や会議室案内の実証実験を行った経緯がある。
 
 コミュニケーションロボットを用いて、未来のオフィスの可能性や、将来の街への本格展開を見据えたもので、ロボットによる効率的で付加価値の高い施設運営のあり方を追求していくという。
 
 一方で、横浜市内には、2017年実績で3631万人の観光集客があり、依然として増加傾向にある。さらなる観光需要の取り込みにも積極的で、横浜ランドマークタワーでも、訪日外国人観光客への付加サービスの提供、先進性アピールによる来館者の満足度向上、運営効率の向上などを目指している。
 
 さらに、三菱地所では、今後の人手不足への対応や、付加価値の高いビルサービスの提供に向けて、ロボットを活用した取り組みを開始しており、丸の内エリアの「オープンイノベーションフィールド」化を進めている。ここでは、先端技術やテクノロジーの街づくりにおける有用性などについて調査・研究を行う「Marunouchi UrbanTech Voyager」プロジェクトを展開しており、今回の横浜ランドマークタワーへの「EMIEW3」の導入は、同プロジェクトの一環として取り組むものだという。そのほかにも、横浜ランドマークタワーでは、2018年9月に、警備、清掃、運搬といった用途で、ロボットを活用した実証実験を行っている。
 
 三菱地所 ビル運営本事業部 統括の渋谷一太郎氏は、「今回のEMIEW3の導入によって、様々なデータを取得し、どんな国の人が来ているのか、どんなサービスが求められているのかといったことも検証し、サービス向上によって、付加価値を高めていきたい」と述べた。
 
 横浜ランドマークタワーは、1993年7月に竣工。今年で開業25周年を迎える。地上70階、塔屋3階、高さ296m、延床面積は392,885㎡を誇り、オフィスや商業施設、ホテル、ホールが入居。年間3000万人が訪れる、その名の通り、横浜市のランドマークとなっている。69階のスカイガーデンは、273mの高さにあり、横浜港や横浜市の景色を一望できる。

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