AIで代替が効かない「説得」術は、3つのポイントを押さえて磨け

いつか自分の仕事がAIに取って代わられるかもしれない……。ビジネスパーソンなら誰でも一度は考えたことがあるはずだ。たとえば’15年には、野村総研が「今後、10~20年後に日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等に代替が可能になる」という研究結果を発表している。

◆アリストテレスが発見した効果的説得術

 このような「AIが人間の仕事を奪う」というニュースは多くの人が注目・危惧しているテーマのひとつだ。その対象となった職業には、スーパー店員やタクシー運転手、レジ係、受付係、警備員などが挙げられている。特別なスキルや知識が求められない仕事、マニュアルに沿った仕事、ルーティンワークの仕事は今後、AIやロボットに取って代わられてしまう可能性が高い。

 一方で、この研究においては、AIなどに奪われない職業の種類も発表されている。その職業に求められる能力の例として「他者との協調」「他者の理解」「説得」などが挙げられている。

 これらはまさに、心理学が得意な領域だ。ちなみに、「心理学研究者」も人工知能やロボットなどに代替される可能性の低い職業に入っていた。

 著者が心理学を学び活用してもらえるようセミナーやコンサルティングを行なっている理由も、多くの方にAIやロボットに替えの効かない存在になっていただきたいからである。

 前述のとおり、AIに代替が効かない能力のひとつが「説得」だ。

 お金を払って商品を買ってもらったり、多くの人に支持してもらうためには、「人を説得する」という能力は必須である。

 様々な価値観を持った人がいるなかで、「人を説得する」ことは簡単なことではない。また、なかなか誰かに教えてもらえる能力ではない。

 たとえば、営業やコンサルタントを仕事にしている方は、書店に行き『交渉術』という名がつくものを読んだことがあるだろう。しかし、このような題名の本を読んでみると、気をつけるべき項目が多すぎて、すぐに日常生活で活用するにはハードルが高すぎる。

 そこで、筆者が注目しているのは2300年以上も前に哲学者アリストテレスが記した書物『弁論術』である。

『弁論術』はアリストテレスが、人を説得するために必要なテクニックについてまとめた書物であり、2300年以上たった今でも色褪せることのないテクニックばかりである。

 そのなかで、アリストテレスは、人を説得するために必要な技術として「弁論術の説得の3種」について言及している。

 その説得の3種とは「ロゴス(論理)」「エトス(信頼)」「パトス(共感)」だ。この3種を満たすことが、人を説得して動かすために重要だと述べている。それぞれについて紹介していこう。

◆聞き手の共感を得るためのポイントとは

エトス(信頼)

 エトスとは「信頼できるような人柄かどうか?」ということだ。相手を説得するときは、相手に信頼してもらえるようにさまざまなところに気をつける必要がある。

 たとえば、服装、表情、仕草、持ち物、人当たり、性格などの観点から、相手の信頼を得れるよう気をつける必要がある。

 また、このエトスはほかの2つに比べてもっとも強力な武器だともアリストテレスは述べている。

 心理学のテクニックで「ハロー効果」というものがこの技術の効果を裏づけている。ハロー効果とはひとつの突出した特徴があると、ほかの特徴の評価も、その突出した評価に引きずられて高くなるというものだ。エトスはこのことを指しているのだろう。

 また、人間の第一印象は多くの場合において、外見で決まり、その印象を変えるのには長い時間と多くの労力がかかる。

 知人のある外資系保険会社のトップ営業マンは、部下に「外見には一番気をつけろ」と指導をしている。優秀な保険営業や優秀な外資系コンサルタントの方々は高級なスーツに身を包み、髪型をしっかり決めているのも「この人にお願いしても大丈夫そうだ」という印象を持ってもらうためなのだろう。

パトス(感情)

 パトスとは「聞き手の感情」である。人は自分の感情次第で意見を変えてしまう場合がある。相手が穏やかなときには説得できた内容でも、相手が不機嫌なときに同じ提案を持っていっても断られてしまう場合がある。

 そのため、相手の感情を自分に有利になるように誘導する必要がある。

 相手の感情を分析して、相手が乗り気じゃないときは、アイスブレイクを挟みながら相手の感情を誘導するほうが効果的だ。

 反対にアイスブレイクではなく熱量を込めたプレゼンを行なって、相手の感情を引っ張ることも有効である。

 多くの人の感情をコントロールしていた一例として、ヒトラーの演説は熱量に溢れており、その演説の技術は群衆の感情を束ねてひとつの方向に向けていた。このことを、社会心理学者のギュスターヴ・ル・ボンは『群衆の精神的統一の心理法則』と名付けている。

 日本人のプレゼンでは、温度の高低が少ない人が多い印象を受ける。つまり、資料の文字を棒読みするだけ人が多いということだ。そういう場合は、眠気を誘うし、その人の本気度が伝わってこない。

 政治家で例えるなら、小泉進次郎氏の街頭演説は熱量に溢れている。その要素も有権者の心を動かしているひとつなのではないだろうか。熱量という「パトス」を営業やプレゼンに活用してみてほしい。

ロゴス(論理)

 ロゴスとは「説得する内容が論理的に構成されているか?」ということである。論理的とは、「説明に漏れがないか?」や「筋道が通っているか?」ということだ。

 言われてみれば当たり前のことだが、最低限気をつけるべきこととして、心にとどめておく必要がある。

 説得をする過程で論理に穴があると、相手がつまづいてしまい、せっかく準備した資料や時間が無駄になってしまう。

 相手が理解しやすいよう、「3段論法」や「起承転結」、「演繹法」などのフレームワークを活用して論理的な文章を作ることが重要である。

 いかがだっただろうか。エトス(信頼)、パトス(感情)、ロゴス(論理)は人を説得するために効果的なテクニックである。

 自身の営業シナリオや日常生活を振り返ってみて、上記の3つがどれだけ満たせているか確認し、どれを足す必要があるのか振り返ってみてほしい。そして、来るべきAI社会でも生き残れるような、人間が得意とする領域のスキルを身につけていただきたい。

【参考資料】

『日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に』野村総合研究所

『弁論術』アリストテレス

『群衆心理』ギュスターヴ・ル・ボン

【山本マサヤ】

株式会社Infinite Innovation代表取締役。心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出

公式ホームページ:https://masayamamoto.com

Twitter:@3m_masaya

Instagram:@masaya_mentalist

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