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zoom RSS 「生きた建築」で新たな価値を広める「イケフェス大阪」

<<   作成日時 : 2018/12/15 19:11   >>

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「イケフェス大阪」という建物公開イベントをご存知だろうか。正式名称は「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」という。毎年秋の週末に大阪市内の様々な建物が一斉に公開され、誰でも内部を見学できる。2014年に始まったイベントだ。

 生きた建築?  と不思議に思うかもしれないが、この言葉がイベントの趣旨を端的に表している。公開されるのは歴史的な建物からオフィスビル、有名建築家の名作、街場のレストランやバーまで幅広い。共通するのが、趣旨文にもあるように「大阪の歴史や文化、市民の暮らしぶりといった都市の営みを伝え、今も生き生きとその魅力を物語る」という点だ。「文化財としての建築とは異なる、建築の新しい価値を発信」することで、建築に関心を持つ人の裾野を広げる狙いがある。

 イベント名称に「ミュージアム」と入るのは、大阪のまちを1つの大きなミュージアムと捉えるという大阪市の「生きた建築ミュージアム事業」を発端とするからだ。2016年以降は実行委員会方式で開催している。

 2014年は参加建物55件、参加者数は延べ約1万人だったのが、2017年は参加建物101件、台風到来の悪天候にもかかわらず、参加者数は延べ約3万人。評判が評判を呼び、参加建物、参加者数ともうなぎ上りだ。その盛り上がりは東京にも伝わっていて、筆者も今年、東京から初めて参加した。


■「階段の名手」のデザイン

 5回目となる今年のメイン期間は10月27日と28日の土日。この1週間ほど前からプレイベント、11月初旬までアフターイベントもあり、参加建物は113件。確かに「日本最大級の建築イベント」と謳うだけのことはある規模だ。

 どんな建物が参加するかは、日時とともに、イベントの公式ウェブサイトと公式ガイドブックで9月下旬に発表される。建物の内部を見学できるというイベントの性格上、定員などの関係から事前の申し込みが必要なものもある。

 参加建物の6割近くは「船場・中之島エリア」に集まる。いわゆる「大大阪(だいおおさか)時代」の建物が残る一帯だ。次いで多いのが「キタエリア」「南船場・ミナミエリア」だ。大阪の地理に不案内な筆者は移動時間の見当がつかず、申し込みや順路を考えるときにやや苦慮した。現地に行って分かったことだが、「船場・中之島エリア」だけなら歩いて回ることができる。

 さて、迎えた当日は快晴。絶好のイケフェス日和だった。イベントの様子を写真とともにお伝えしよう。

 案内人を立てるガイドツアー方式での公開だった「輸出繊維会館」は、建築家の村野藤吾(1891〜1984年)が設計した建物で、1960年に竣工。村野は昭和期に活躍した日本を代表する建築家で、大阪を拠点に多くの建物の設計を手掛け、東京の日生劇場や目黒区総合庁舎(旧・千代田生命保険本社ビル)、山口の宇部市渡辺翁記念会館(重要文化財)、広島の世界平和記念聖堂(重要文化財)などがよく知られる。

 輸出繊維会館も代表作の1つだが、シンプルな外観なので、それと知らなければ素通りしてしまうかもしれない。案内人の笠原一人(かずと)氏が、この建物の特徴や見どころを分かりやすく教えてくれる。笠原氏は京都工芸繊維大学の助教で、村野建築の研究者だ。
「外観は装飾がなく、窓と壁面がぴったり揃っていて軽快な印象を与え、モダンです。でも、よく見ると、ヨーロッパの古典主義や様式的な建築の特徴も読み取れます。外壁はイタリア産の石材トラバーチンで、壁に石を貼るのは古典主義の影響。また、壁から柱型が出ていることや、1階の窓の位置が高いことも古典主義の流れです」

 外観の説明を受けた後は建物内に移動。関係者以外は普段入れない屋上と地下を見学する。村野は「階段の名手」と言われているので、階段もチェックポイントだ。そのデザインは手すりの握りやすさにまで及ぶ。

「手すりやドアのハンドルなどは人の手が直接触れるものだから、村野は特に大切にデザインしています」

 他にも照明や家具など、あらゆるものがこの建物のためにデザインされていて、村野の能力に感嘆するとともに、どれだけのエネルギーを注ぎ込んだのかと思いを馳せる。


■一般住宅も公開に

 参加建物の多い「船場・中之島エリア」では、案内人なしでも自由に見学できる建物を散歩気分で回った。移動の間には蛍光オレンジ色のガイドブックを手に持つ人を何人も見かけ、勝手に連帯感を覚える。

 実行委員会事務局長で近畿大学建築学部准教授の岡伸一氏はこう話す。

「表紙を派手な色にしたのは、同じイベントに参加しているという共有意識を、まち全体で持ってもらいたかったから。知らなくても参加者同士が声を掛け合う姿も見られ、作戦通りでした」

「大阪市中央公会堂」は大・中・小の各集会室と特別室が、日曜日の午後から夜にかけて一斉公開された。

「中央公会堂は大阪では最も有名な近代建築ですが、中を見ることは意外に難しいんです。集会室は貸しホールとして人気が高く、予約ですぐに埋まるから。中を全部空けて自由に見られるなんてことは、めったにありません」

 そのためか、公開開始時間と同時にたくさんの人が押し寄せた。

「イケフェス大阪も最初の頃は、本当に建築が好きで来ている人が大半でしたが、回を重ねるにつれ、ふらっと来てみた、という感じの人が増えている印象です」

 ちなみに参加者の内訳を調べると、最も多いのは40代の女性だという。

 また、数はまだ少ないが、一般の人が普段から生活している「住宅」内部の公開もあり、筆者はその1つを見学する機会を得た。プライバシーがあるので詳細や写真は控えるが、人好きな大阪の地だからこそ、“他人に家の中を見せる”ことが可能だったのではないかと思う。


■「あらゆるものを一緒に体験」 

 イケフェス大阪は、建物のオーナーの理解と協力があって成り立っているイベントだ。建物を公開するために、社員を休日出勤させたり、特別に警備員を雇ったりといった費用は建物のオーナーが負担する。だからオーナー側に寄り添う姿勢が、イベント全体に満ちている。

「自分の家に不特定多数の人がずかずか入ってくるというようなイベントだからリスクがある。それを受け入れてもらっているのだから、私たち実行委員会はオーナーファーストです。オーナーが1番えらい。参加者もそれはよく理解していて、去り際に『ありがとう』と感謝の気持ちを伝える人が多い。その関係が、これまで大過なく続いてきた要因だと思います。

 オーナー側も『素敵な建物ですね』と言われると気分が良いでしょう。特に戦後、1960〜70年代に出来たビルのオーナーは、自分が持っている、あるいは働いている建物の価値にまだまだピンときていないところもある。でも、2日間でこれだけたくさんの人が訪れ、口々に良いと言われると、確実に意識の変化が起こります」(岡氏)

 建物への愛着が芽生え、建物に誇りを持つようになり、それが建物の“存続”へとつながっていく。スクラップ&ビルドを当たり前としてきた日本では、建築界では価値の認められている建物も、古くなればいとも簡単にこの世から消えていく。実行委員会のメンバーには建築の専門家が多く、イベントを通して「建築の新しい価値を発信」することで、そうした世の流れに一石を投じたいと考えている。

 参加建物の中には、オーナーや社員自らが建物の説明にあたるところもあり、イケフェス大阪の大きな特徴となっている。これも、人好き・話し好きな大阪だから可能なことだろう。筆者は参加できなかったが、例えば「オーガニックビル」は、オーナーである小倉屋山本の取締役管理本部長・5代目見習いがガイドツアーの案内人を務めた。

 ベテラン社員の案内に新入社員を同行させて自社の歴史を学ばせたり、案内人を務める若手社員に社史を調べさせたりなど、「この機会をうまく活用して、社内教育の場にしているオーナーもいる」(岡氏)という。

 では参加者にとっての意義はどんなところだろうか。岡氏曰く、

「美術館に展覧会を見に行くと、作品を鑑賞することはできますが、作品の背景は勉強したり、想像したりするしかありません。一方、イケフェス大阪では不可避的に、その建物にまつわるあらゆるものを一緒に体験することになる。私たちが『生きた建築』と言っている意味は、そこにあります。そして建物の中に踏み込み、こういう歴史や生業があるのだと、建物にまつわる別の側面を知ることで、都市の厚みも実感してもらえると思います」

 例えば参加建物の1つ、1921年築の「伏見町 宗田家住居」は、残された過去の図面や写真をもとに修復され、今年、ガラス容器を扱うショップ&ギャラリーとして生まれ変わった。かつての船場の暮らしを今に伝える小さな町家は、1階に防空壕の跡を残す。

 また、「日本圧着端子製造株式会社」は気鋭の建築家の設計による本社ビルを公開。同社はコネクタや圧着端子の製造販売で世界的なシェアを持ち、そういう会社が大阪のど真ん中にあることを、建物の公開によって多くの人が知った。


■観光振興ではない「教育の場」

 建物一斉公開イベント自体は、欧米では早くから行われている。最も有名なのが「オープン・ハウス・ロンドン」だ。普段は入場が制限されているビルや歴史的な建物、優れたデザインの個人住宅の一般公開を通じて、ロンドンの建築の魅力を市民にもっと知ってもらいたいという趣旨で、1992年に始まった。

 毎年9月に開催され、現在は800以上の建物が参加。2日間で25万人もの動員があるが、主催者は「これは市民のための教育の場だ。観光振興が目的ではない」と言い切っているという。イケフェス大阪はオープン・ハウス・ロンドンを手本に、同じく教育にも力を入れ、子どもが主役のプログラムも用意している。

 日本でもイケフェス大阪以前から建物公開イベント自体はあったものの、“軌道にのっている”という点でイケフェス大阪は群を抜く。そして、この成功が刺戟となって各地に“種”が広がっている。

 先導役の大阪市は、「5年目でフェーズが少し変わった」という。

「良くも悪くも初期状態を脱しました。勢いで突き進んできたところから、次は高い位置にどう定着させるか。ギアチェンジの時期にきたと感じます」

 着目するのは、「ベビーカーを押す若いカップルなどはこれまで見られなかった」という子連れファミリーの増加だ。その兆しをどう読むのか。2019年は10月26、27日に開催予定だ。

生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪
https://ikenchiku.jp

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