辺野古移設「官製デマ」 政府に深まる玉城県政への不信

 政府が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾=ぎのわん=市)の移設先である名護市辺野古で土砂投入に着手したことで、移設に反対する沖縄県との対立は一層深まるとみられる。政府は普天間飛行場の危険性除去のためには辺野古移設が必要とする考えに理解を求め、玉城(たまき)デニー知事も政府との対話を重視する姿勢は崩していない。ただ、玉城氏は政府と激しく対立した翁長雄志(おなが・たけし)前知事時代の執行部をそのまま引き継いでおり、政府は県による情報操作に神経をとがらせている。

 県は辺野古移設に反対する根拠として、最近になって「完成までの費用は最大2兆5500億円かかる」(玉城氏)と繰り返している。計画の約2400億円から10倍以上にふくれあがることになり、財政負担を考えても辺野古移設は現実的ではないというわけだ。

 県はこれまで、2本の滑走路や強襲揚陸艦が接岸可能な施設は普天間飛行場にはない機能として「新基地建設による負担増」に反対してきた。だが、2本の滑走路は騒音軽減を求めた名護市の要望を受け、計画を変更した。接岸施設に関しても、防衛省幹部は「滑走路に隣接しており、強襲揚陸艦の母港としては成り立たない」と説明する。

 こうした中で急浮上した「2兆5500億円」は、辺野古移設反対の立場を補強するために県が行った試算だ。11月に行われた杉田和博官房副長官と謝花(じゃはな)喜一郎副知事の集中協議でも示された。

 県によると、辺野古で建設予定の護岸22カ所のうち着手済みの護岸は7カ所。計画では7カ所分で約78億円だが、すでに約928億円を支出しているため総事業費は約12倍になると算出した。とはいえ、928億円には警備費なども含まれており、防衛省幹部は「どう考えてもそんな数字にはならない」と首をひねる。

 県の担当者は「928億円の内訳が分からないので単純計算した。あくまで議論をスタートさせる材料だ」と語る。だが、数字は「反辺野古」を支える材料として独り歩きしており、自民党は県議会で「官製デマだ」と批判を強める。連日のように責め立てられた謝花氏は今月7日の県議会でこう答弁した。

 「杉田副長官も黙ってうなずいておられた」

 政権幹部が県の試算にお墨付きを与えたかのような説明で、これを聞いた政府高官は「悪質だ。信が置けない男だ」と吐き捨てた。県執行部は池田竹州(たけくに)知事公室長が10月、名護市が基本合意書に署名した現行計画について「地元の合意などは取られたものではない」と発言しており、政府の不信は根強い。

 玉城氏は13日、首相官邸で記者団に「とにかく工事を止めて協議をしてくれ」と述べ、今後も政府と対話を継続する意思を表明したが、政府とすれば対話が情報戦に利用される恐れを捨てきれない。13日の菅義偉(すが・よしひで)官房長官と玉城氏の会談が約15分と短時間で終えたのは、対話の基礎となる信頼関係が急速に損なわれつつあることを示した。

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