プロ野球トライアウトに一般企業の人事担当者 選手のセカンドキャリアに注目

所属球団から戦力外通告を受けたプロ野球選手が現役続行を目指して挑む「合同トライアウト」。各球団のスカウトが見つめるのとは別に、スタンドにはスーツ姿の人が何人もいました。野球とは直接関係のない一般企業の人事担当者です。厳しいプロの世界で戦ってきた選手たちなら一般企業でも大活躍できると考え、セカンドキャリアの場としてスカウトしているのです。一般企業も熱視線を送るトライアウトの知られざる一面を取材しました。

「自分の好きな選手が最後かもしれないので」
「プロ野球トライアウトの会場にやってまいりました。私も知りませんでしたけど、トライアウトというのはお客さんが多いんですね。すでに長蛇の列ができています」(辻憲太郎解説委員)

11月13日に開催された「プロ野球12球団合同トライアウト」。会場となった福岡のタマホームスタジアム筑後には観戦のため前日から並ぶファンの姿も。

Q.何時から並んでいる?
「0時半くらい」(男性ファン)
Q.深夜から並ぶだけの価値はある?
「自分の好きな選手が最後かもしれないので」

「兵庫から(来ました)。大阪から」(女性ファン2人)
Q.お目当ては?
「阪神の西田直斗選手」
「阪神の今成亮太選手」
Q.どういうところを見たい?
「本人が最後のユニフォーム姿になるかも。(試合に)全然出れなかったから、ファンの方に見てほしいと言ったから」

ファンに混じったスーツ姿の人は?
最後になるかも知れない選手の雄姿を見ようと集まったファンに混じって、一見場違いとも思えるスーツ姿の軍団も。辻解説委員話を聞いてみました。

Q.今回の目的は?
「今までと方向を一新して、違う角度で求人を探していこうかと」(日本パナユーズ 八木昭憲さん)

大阪に本社を置く警備会社の人事担当の八木さん。トライアウトに来るのは今回が初めてだといいます。

Q.求人のチャンネルを増やさないと集まりにくい?
「そういう現状もやはり…人手不足が進んでますので。まずは(会社案内を)受け取ってもらって、連絡先聞ければ良いですけど、わが社を知っていただくのが一番」

トライアウト後、選手へアプローチ…反応は?
そして9時開場。ファンがスタンドへ…この日、詰め掛けたファンは5500人以上。

「満員!すごいですね。バックネット裏、メインのところがスカウトの皆さんが陣取っている場所。皆さんスーツできめています。(スカウトの)エリア以外でもスーツ姿の方がいますので、一般企業の方がサラリーマンとしてスカウトに来ている」(辻解説委員)

ファンのみならず、一般企業も熱視線を送るトライアウト。大阪の警備会社の八木さんもスタンドから観戦ならぬ人材探しです。

Q.どういった目線でトライアウトを見る?
「体型がやはり…いい体型の人がいるなと…」

この日、トライアウトに参加した選手は投手29、野手19の48人。テストは対戦形式で行われ、打者は4~5打席、投手は3人の打者と対戦し、その間に結果を出さなければなりません。ファンはワンプレーごとに一喜一憂します。

スタジアムの外ではテストを終えた選手を待つ多くのファンが…選手に近づいてサインを求めます。その中に混じって八木さんも選手に近づきます。

「大阪からきた会社なんですけど、もしよろしければパンフレットいれてますので」
「ありがとうございます」(日本ハムファイターズ 新垣勇人投手)
「社長の名刺も入れてますので、ご連絡いただければ。大阪が中心なんですけど、親会社が全国会社なので、機会がありましたら…」
「ありがとうございます」

「やるとしたらどういう仕事に?」(読売ジャイアンツ 河野元貴選手)
「いろいろあるので、一回見ていただいてと思っています」

選手一人一人にいくつもの企業が殺到。選手の手元には山ほどの会社案内が。中には海外から来たという企業もありました。

「台湾のスポーツマネージメントの会社です。野球選手のキャリア開発、どうすればいいキャリアを歩めるか。(台湾で)中国語も学べるので、(日本に)帰ってきてから中国語いかして仕事することもできるといった意味でスカウティング」(台湾企業からのスカウト)

求人を目的としてトライアウトに企業が集まりだしたのは、3年ほど前からだといいます。こういった状況を選手はどう思っているのでしょうか。阪神の山本翔也投手に伺うことができました。

「一瞬しかお会いしてないので、自分をしっかり見てくれて言ってくれているかわからないので」(阪神タイガース 山本翔也投手)

トレーナーの道を案内する医療系専門学校
選手は現役続行を目指してトライアウトを終えたばかり、企業側も即採用とは考えていません。

「次の選択肢ということで、整骨院の先生の国家資格を取るようなシステムを導入している」(近畿医療専門学校のスタッフ)

柔道整復師の国家資格を取得するための大阪の医療系専門学校です。この学校では他の企業に先駆けて4年前からトライアウトに出向いて選手に柔道整復師、トレーナーの道を案内してきました。

Q.トライアウトに行くきっかけは?
「野球選手のセカンドキャリアということで、東京まで行ってNPB(日本野球機構)の理事の方にお会いしてお話した、選手のセカンドキャリアについて。NPBの理事の方たちも『これは良い話』やと。『でも(選手に)言う時期が難しいな』と」(近畿医療専門学校 小林英健理事長)
Q.そこでトライアウトを思いつかれた?
「そうです」

この学校で学び国家資格を取得。現在、トレーナーとして第二のキャリアを歩む元プロ野球選手がいます。元阪神タイガースの投手・清原大貴さんです。

「自分の(プロ野球生活)6年間経験したことで、一番大きかったことはなんだろう思ったら、けがだったので、けがにつながるような何かないかなと相談したら、『専門学校という道もあるよ』と言ってもらって。プラス思考な人間なので僕自身、阪神タイガース卒業したと思って、新しく学校入り直すという感じで、抵抗はなかったです」(清原大貴さん)

プロ野球選手が持っているネットワークを得たい
トライアウトから10日ほど経って、辻解説委員トライアウト会場で会社案内を配っていた大阪の警備会社「日本パナユーズ」の八木さんの元を訪ねました。

Q.(会社案内を渡した)選手から連絡は?
「きょう現在、連絡はないです」(日本パナユーズ 八木昭憲さん)
Q.行った甲斐はありました?
「(プロ野球選手が)持っているネットワークは、一般企業が持っていないものがあると実感した。そういうネットワークを得ることができれば(会社が)今後変わっていくと思う」

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