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zoom RSS 沖縄の伝統まで「中国脅威論」を煽るために利用されるこの現実

<<   作成日時 : 2018/11/03 11:01   >>

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 ジャーナリストの安田浩一氏が陰謀論や都市伝説を徹底取材する「安田浩一ミステリー調査班(通称YMR)」。沖縄に流布する陰謀論「中国脅威論」の実態を探る「沖縄編」の後編をお送りします(前編はこちら)。

沖縄の伝統まで「中国脅威論」を煽るために利用されるこの現実
若狭で観光客を迎える龍柱
「龍の柱」と中国脅威論
 沖縄の海の玄関口といえば、那覇市の若狭地区である。

 すぐ近くの港には大型クルーズ船が停泊する客船ターミナルがあり、下船した外国人観光客が歩く姿を見かける機会も少なくない。

 上陸した観光客を迎えるのは、道路を挟んで建つ2本の龍柱(龍を形どった柱)だ。
高さ約15メートル、幅は約3メートル。とぐろを巻き、鎌首を持ち上げたデザインは、間近で見上げれば圧倒的な迫力が伝わってくる。玄関口にふさわしい巨大なモニュメントだ。

 この「龍柱」が完成したのは2015年12月。故・翁長雄志前知事が那覇市長だった時代に計画したものだ。

 事業主体の市は次のように説明する。

 「中国・福州市との友好都市締結の30周年記念事業として建てられました。龍柱の建つ若狭は客船ターミナルの目の前であり、しかも空港から市中心部へと向かう那覇西道路にも面しています。玄関口ということを考えれば、これ以上の場所はありません」(都市みらい部・花とみどり課)

 近くの公園でグラウンドゴルフを楽しんでいた老人も、「那覇の新しいシンボル」だと胸を張る。

 「クルーズ船が到着するたびに、観光客が龍柱を見上げては写真を撮っています。もう少し宣伝してくれれば観光名所として定着するかもしれない」

 足元ではそんな期待もあるのだが、実は必ずしも市民みなに受け容れられているわけではない。

 下の写真を見ていただきたい。

 先ごろおこなわれた那覇市長選で、城間幹子市長(再選)に挑んだ対抗陣営が配布したチラシである。

 〈私たちの税金3億3000万円で龍の石柱をつくってしまった…〉

 チラシには、うなだれた市民のイラストが添えられている。

 これはいったいどういうことなのか。地元記者が解説する。

 「要するに当初の計画よりも予算が大幅に増えてしまったのです。最初は龍も一体だけでしたが、門としてふさわしくするため2体に変更。さらに工事も遅れたため、当て込んでいた国の一括交付金の一部が受け取れなくなりました、当初こそ市の負担は5000万円程度と見込まれていましたが、結果として市は総額約3億3000万円のうち、約2億2000万円を負担しなければならなくなりました」

 こうした経緯もあり、先の市長選においては、翁長県政と連携してきた城間氏に対し、「無駄遣いの責任を取れ」とばかりの批判や攻撃が加えられたのであった。

 だが、「龍柱」批判の本質は、けっして「無駄遣い批判」ではない。やはり、ここぞとばかりに中国脅威論を結びつけられたのである。

「なぜシーサーではないのか」という異論も
 「龍柱」は中国の属国であることを意味している──そうしたウワサ話がネット上にあふれた。

 というのも、この「龍柱」計画が、習近平氏の中国共産党総書記就任とほぼ同時期に打ち出されたため、翁長氏から習氏に向けた「就任祝い」ではないかと一部の人々から勘繰られたのである。

 「龍柱」計画が持ち上がってからは、中国絡みの批判が飛び交った。

 ・中国への服従を示すシンボル像
・「龍柱」の頭が海の方角を向いているのは、中国海軍を招き入れるため

 こうした文言はネットの書き込みだけでなく、地元の右翼や保守系団体も"県政・市政攻撃"の材料として用いた。

 「沖縄のシンボルであるならば、シーサーにすべきだ。あえて龍としたのは中国を意識したからに違いない」

 いまでも、そう批判する向きは少なくない。

 龍の爪の数を問題視する者も多かった。というのも、中国では龍の爪が5本であるのに対し、龍柱は4本爪だ。5本爪は中国のみで使われ、かつて属国の立場とされた周辺諸国は4本爪を用いてきたというのが通説だ。よって、今回の「龍柱」も、「中国の属国を表したもの」だとする"見解"が広まっている。

 前出の市の担当者によれば、建設中から電話やメールによる抗議が相次いだのはもちろんのこと、工事現場での抗議活動も繰り返されたという。

 2016年には「龍柱」の下部に黒ペンキで「おなが ばいこくど」と落書きした男性が器物破損の容疑で逮捕された。

 ちなみに「龍柱」と中国の脅威を結びつけたものとしてわかりやすいのは、幸福実現党が作成した小冊子である(前編でも一部を紹介した)。これは沖縄県内でもかなりの広範囲で配布されたものだ。

 〈謎の「龍柱」の建設計画 「中国属国のシンボルか!?」〉

 そうしたタイトルが付けられた小冊子には、中国による沖縄侵略を描いた漫画が掲載されている。

 ある時、ついに中国軍が沖縄本島に上陸した。
中国軍人たちが小銃を掲げて叫ぶ。
「目印の龍柱が見えたぞ! 全軍後へ続け!」
中国軍は若狭の龍柱の間を通って県庁に向けて進軍する。
軍人たちは県庁の知事執務室に突入。さらに那覇市内に潜んでいた民兵(観光客をイメージした絵柄となっている)も、県内マスコミの社屋を制圧する――といったストーリーだ。

 ここでも「龍柱」はまさに中国の侵略を呼び寄せるシンボルとして描かれている。

「龍柱」を徹底的に調べてみた
 それでは、「龍柱」にはそのような意味が込められているのか。

 当然ながら市の担当者は「そんな意図があるわけない」と全否定だ。

 そもそも沖縄では「龍柱」はけっして珍しい存在ではない。

 以下に写真を示そう。

 例えば、これは空港と市内を結ぶ国道58号線、国場川にかかる明治橋の龍柱だ。橋の両端にそれぞれ向き合うような形で建てられている。

 県庁舎の裏側にも一対の龍柱。さらに県警本部の正面玄関前にも。

 「龍柱」が侵略を手引きするシンボルなのであれば、まさか県警本部の玄関に鎮座することはないだろう。

 それだけではない。国際通りの菓子店前にも、あるいは米軍の敷地内にまで「龍柱」が置かれている。

 「龍というのは、かつては権力の象徴のように思われていました。中国から伝わったのは事実でしょうが、沖縄でも神聖な存在として琉球国の時代から定着しています」

 そう話すのは首里城公園を管理する沖縄美ら海財団の学芸員だ。実は、首里城には33体もの「龍柱」が存在する。

 「1768年に記された首里城の設計仕様書ともいうべき『寸法記』にも、正殿に置かれた龍柱の絵がしっかり記録されています。これだけの歴史を持つのですから、龍柱は沖縄の文化といってもよいでしょう」

 正殿前に、あるいは王座に。城内、いたるところで「龍柱」が荘厳な姿を見せている。

 そう、「龍柱」はシーサーと並んで、紛うことなき沖縄の文化なのだ。

 中国の影響を受けているから許せない、とするのであれば、漢字や仏教だって排斥せざるを得なくなる。県内各所、一般の民家に守り神として置かれているシーサーもそうだろう。シーサーは古代オリエントから伝わった獅子が源流とされているが、これも東方世界への服従だというのだろうか。

 「龍柱」に関わる費用を無駄遣いだとするのは十分に理解できる。だが、これを中国脅威論と結びつけるのは、どう考えても、こじつけだ。そもそも沖縄文化として定着している「龍柱」を侵略のシンボルと考えるのは、沖縄への理解が乏しい証拠でもある。

 実は、「龍柱」を中国脅威論と絡めて煽ったのは、県外の人間ではないかという"疑惑"がある。前述した小冊子も東京の幸福実現党本部が制作したものだ。

 前編で登場した、沖縄国際大学教授の佐藤学さんも言う。

 「税の使い道という観点から言えば、龍柱建設はあまり褒められたものではないと思います。観光名所にしたいというのであれば、それこそ龍の口から火を噴かせるくらいのことをすればいい。

 でも、本当の問題は、そんなことまでをも中国脅威論の根拠としてしまう日本社会の空気感ですよ。生活行事にしろ、食べ物にしろ、中国の影響を受けたものなど挙げたらきりがない。結局、中国の侵略から守ってくれるのは米軍基地しかないという結論を導き出すために、こうしたデマが流布されているとしか思えません」

「沖縄の龍柱は、沖縄のものです」
 若狭の「龍柱」のデザインを担当したのは、沖縄美術界の大家として知られる琉球大学名誉教授の西村貞雄さんだ。

 「私も『中国の手先』などと直接に面罵されたこともあります。一部で龍柱の意味がまったく理解されていないのが本当に残念です」

 そう言って、西村さんは悔しそうな表情を見せた。

 「沖縄の龍柱は、沖縄のものですよ。だいたい、中国各地に存在する龍柱とは形状からして違います」

 たとえば、中国特有の「龍柱」は、那覇市内の中国式庭園「福州園」に足を運べば目にすることができる。

 下の写真をご覧いただければ、沖縄の「龍柱」との違いがわかるだろう。

 中国式「龍柱」は、龍が柱に巻き付いた形状となっているのに対し、沖縄の「龍柱」は、龍の胴体そのものが柱となっている。そう、デザイン的にはまったくの別物なのだ。

 「私はアジア各国を回って龍柱を見てきましたが、中国の影響を受けつつも、それぞれの国がそれぞれの龍柱を持っている。爪の数にしても同様です。属国の龍柱は5本爪であってはならないというのが通説ですが、私から言わせれば、これも怪しい。モンゴルには3本爪、4本爪、5本爪の三種の龍柱がありましたし、韓国には6本爪の龍柱がありました。

 私が若狭の龍柱を4本爪にしたのは、単に沖縄の伝統的な龍柱が4本爪だったからにすぎません。歴史どおりに、伝統に基づいてデザインしただけです。そこには中国への忠誠だの、そんな意図が含まれているはずがない。仮に批判を受けいれて5本爪にしたら、それは歴史を無視した、きわめて政治的なデザインとなってしまうではないですか」

 西村さんによれば、若狭の龍柱には、沖縄の歴史と未来への思いが込められているという。

 「一対の龍は向き合っているのではなく、海の方角を向いています。つまり、尾の部分は首里城までつながっているという想定です」

 西村さんは、これを「龍脈」と呼んでいる。

 龍のからだは首里城から国際通りの地中をくぐり、海岸線で地中から垂直に飛び出る、といったイメージだ。首里城は沖縄の源流であり、国際通りは戦後復興の象徴である。そして若狭の港は外に開ける海の玄関だ。

 つまり、この「龍脈」は沖縄の歴史を意味する展開軸、導線なのだ。

 「龍の頭が海を向いているのは、その先の未来を見ているからなのです。水平線の先にあるニライカナイ(理想郷)ですよ」

 「龍脈」は過去と未来を結ぶ。中国とも侵略とも関係ない。龍の目玉はニライカナイの海を望む。

「右翼市議」の大物が語る思い
 「沖縄が中国に乗っ取られる? 現実的な話じゃないね。それは即ち、戦争ってことだ。ありえないですよ」

 意外な言葉だった。

 私にそう答えたのは、石垣市議の仲間均さん(69歳)だ。

 仲間さんは沖縄でも有数の"右翼市議"と呼ばれることが多い。

 強硬な「反中国」姿勢で知られ、特に尖閣諸島への思い入れは強い。

 「尖閣だけは絶対に守る」。そう断言する仲間さんは、これまで尖閣に上陸すること16回。そのたびに海上保安庁に捕まり、これまで13回も書類送検された。

 元空手家という風貌も相まって、コワモテ右翼を感じさせるには十分なのだが、そんな仲間さんですら、昨今の差別的な中国脅威論には懐疑的だ。

 「結局、中国人に対する差別が根底にあるようにも思う。私は日本の領土である尖閣を脅かす中国という国家、軍に対してはこれからも強硬派であり続けるが、中国人に対しては敵意などありません。沖縄は琉球の時代から中国文化の影響を受けてきました。それは否定すべきことじゃないですよ」

 流布されている現実味を持たない中国脅威論はただの偏見であり、それだけは許容してはいけないのだと仲間さんは何度も繰り返した。

 「中国脅威論は常に基地問題とセットになって語られる」と指摘するのは、沖縄在住のジャーナリスト、屋良朝博さんだ。

 「その手の話を煽っている人々は"怖い中国"を強調し、だから米軍基地が必要なのだと訴える。具体体には辺野古問題を政府の思惑どおりに進めるために、持ち出されているに過ぎないと思いますよ」

 中国脅威論を扇動することで、辺野古の新基地建設が正当化される。つまり、脅威は沖縄県民のなかから生まれたものではなく、常に「本土」の側から吹き込まれるという構図だ。

 たしかに、沖縄で中国脅威論が猛威をふるうようになったのは、辺野古での新基地建設が決まった以降である。そして沖縄の民意は先日の知事選の結果をみるまでもなく、常に政府決定に「NO」の決断を下してきた。

 沖縄が中国に占領されてもかまわないのか──中国脅威論は沖縄にとって、ときに恫喝のように響く。

 そもそも新基地建設が辺野古でなくてはならない理由を政府が明確に示していない。

 「移設先となる本土の理解を得られない」というのが、政府が繰り返してきた見解だ。中国脅威論や地理的優位性が、それを補強する。

 「結局、戦場としての沖縄を必要としているのが本土の政治家なのではないでしょうか。地理的優位性を訴え、沖縄を犠牲にすることしか考えていない。考えてもみてください。こんな小さな島が戦場になったら、沖縄はおしまいですよ。ハードパワーで沖縄を守ることなんてできるわけがない」

 屋良さんと会ったのは、沖縄最大のショッピングモール「ライカム」(北中城村)の中にあるカフェだった。

 「ライカム」とは、かつてこの場所にあった琉球米軍司令部 (Ryukyu Command headquarters) の通称である。

 「周囲を見てくださいよ。ここでは米軍人も、中国人観光客も、そして地元の人も、何の争いもすることなく買い物を楽しんでいる。これが沖縄のダイナミズムだと思いますよ」

「中国でも、日本の脅威を煽る者はいます」
 中城村の県営団地。10月下旬、ここで地域の秋祭りがおこなわれた。

 「カレーライスおいしいよ。あ、沖縄そばもあるからね」

 手作りの屋台が並ぶ公園で、集まった子どもたちに声をかけてまわっていたのは中国・北京出身の張世險峰さん(49歳)だ。

 張世さんは団地の自治会役員を務めている。

 「お祭りはいいですね。こうして地域の人が交流できる貴重な機会ですよ」

 お年寄りの手を引き、子どもたちにカレーをふるまい、会場警備も行う。とにかく忙しい。

 張世さんが留学生として沖縄に来たのは93年だ。学生時代に地元の日本人女性と結婚し、そのまま沖縄に居を定めた。いまは国籍も日本に変えて、旅行代理店を経営している。

 張世さんにとって沖縄は誇りだ。

 「美しい自然。独特の文化。これを世界中の人に紹介したくて旅行業に就いているんです」

 そんな張世さんも、中国に対する風当たりが強くなっていることは十分に理解している。地域に溶け込んだ自分のことを「工作員」だと指摘するネットの書き込みも目にしたことがある。

 「バカバカしいから反論もしません。中国でも、日本の脅威を煽る者はいます。どこも同じ。ですから、私がどう見られているかということよりも、私が地域の中でどう生きているか、という問題の方が重要です」

 9月におこなわれた中城村議選に張世さんは出馬した。中国出身者が村議選に挑んだのは県内でも初めてのことである。

 「選挙カーも持っていないから辻説法を繰り返したんです。観光振興などを訴えました」

 結果は次点で落選。それでも、予想以上の支持が集まったことに驚いている。

 「日本国籍を持っているとはいえ、私はまだ外国人だとみられることも多い。それでも、地域を愛する気持ちは誰にも負けていないつもりです。たぶん、次回の選挙にも立候補すると思います。それは中国のためじゃない。この村のために、尽くしたいと思っているからです。それに、もしも私が議員になることができたら、中国に対しても議会制民主主義のすばらしさを伝えることができるじゃないですか」

 月明かりの下、エイサーの太鼓が響く。張世さんも肩を揺らし、足でリズムをとる。
中国人であり、日本人であり、そして張世さんは沖縄人でもある。全身にアジアのダイナミズムが刻印されている。

 そう、沖縄も同じだ。生きるために、島の豊かさを守るために、近隣諸国と独自の外交を続け、文化の交流を重ねてきた。

 「知る。理解する。それだけでいい。それをしなくなったとき、偏見の壁ができる」

 張世さんはそう強調した。

 人々が躍る。指笛が鳴る。沖縄は今日も躍動している。

 中国脅威論は沖縄の停滞を招くだけではないのか。沖縄のリズムに私のからだも揺れながら、そう思わざるを得なかった。 

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