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zoom RSS 現役自衛官はなぜ勲章をつけていないのか?海外軍人と大違いの実情

<<   作成日時 : 2018/11/03 09:00   >>

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「自衛隊ができない50のこと 42」

◆現役自衛官は勲章をもらえないなんて……

 昭和21年から我が国は生存者への受勲を閣議決定で止めていました。昭和38年に受勲制度が再開され、平成15年には警察官や自衛官などの危険性の高い業務に対する枠ができ、その後、少しずつ拡大しているところです。今のところ現役自衛官は受勲対象とはなっていないため、高官でも現役の間は勲章を持っていません。海外へ派遣された自衛官はその派遣国の勲章を授与されている場合がありますが、我が国の勲章を持つ現役自衛官は皆無でしょう。

 海外に赴任する自衛官は、在外公館を警備する「在外公館警備対策官」や軍事情報交換などを行う「防衛駐在官」など、様々な立場で在外大使館・領事館等で活躍しています。儀式やパーティに呼ばれた場合は原則、制服着用がマナーなのですが、たくさんの勲章を身に着けた外国の軍人たちからは、1つも勲章をつけてない自衛官が格下に見られてしまう可能性があり、国の事情とはいえ情けなくなることもあるようです。

 日本では現役自衛官は勲章をもらえないという事情を外国の軍人たちは知りません。しばらく会話を交わして国の事情を説明すればわかってくれるでしょうが、誇り高い自衛官が初対面で格下に見られる屈辱はいかばかりかと思います。だから、自衛官は海外のパーティへの出席が苦手だと言うのです。

 退官後にその功績を讃えられ勲章を受ける自衛官はたくさんいます。でも、残念なことにそれは退官後の話なのです。

 そもそも、勲章は軍人、それも現役軍人の勇気ある行動に対して作られたものです。明治維新以降、最初の皇族以外の栄典の授与を受けたのは台湾出兵の指揮を執った西郷従道でした。軍人や軍属への栄典が「勲章制度」の始まりなのですから、勲章は現役自衛官にこそ授与すべきであると思います。現在の制度が歪なのです。たしかに、退官後に条件が合えば、勲章を受ける資格はあるでしょう。しかし、その時にはすでに自衛官ではありませんから、職務上の外国の軍人との交流も終わっています。現役自衛官が勲章をもらえないのは職務遂行時のスムーズな交流の壁にもなりかねず、とても残念です。

 自衛隊は世界の軍隊から見れば明らかに「軍」そのものです。しかし、日本の憲法下の制度では「軍ではない」ことになっている。自衛官には他国の軍人と関係を良好に保つ任務もあるわけですから、勲章がないことで自衛官に恥ずかしい思いをさせてはいけないと思います。憲法9条の規定で「自衛隊」が合憲かどうかの議論があるために、現役自衛官には栄典を授与できないという判断なのでしょうか? そうであれば、この点でも憲法改正は必要だと思います

◆我が国の勲章には特権がつかないという不思議

 日本国憲法第14条3項では「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。」とあります。

 そもそも軍人の誇りとは、国を守るために雄々しく戦い、敵を倒し勝利に導くことだったはずです。その危険で厳しい軍人の働きに国が与える名誉が「勲章」です。昔の勲章は国から一時金や年金がもらえる栄誉の証であり、褒賞の意味合いを持つものでした。国家のために働いた者に授与されるのが勲章であり、受勲者の以後の生活を豊かにし、家族や周りにも恩恵を与えたわけです。洋の東西を問わず、歴史を振り返れば、武士も騎士も戦闘の報酬には領地や城や財物などを受けとりました。古来より武人たちは栄誉と褒賞を受けるべく奮闘努力してきたのです。

 明治9年(1876)にできた勲等年金令では、授与された勲章によって年金が支給されることになっていました。勲等年金令の規定によると、勲一等は年額800円、勲二等は600円、勲三等は360円、勲四等は180円等の年金を終身受けることができました。昔の勲章は生涯にわたって家族も豊かに暮らせる憧れの制度でした。

 しかし、現行法上では受勲しても特典は何もありません。日本の栄典や勲章授与は形骸化したものになってしまいました。産業や芸術やスポーツで功績のあった人も勲章を授与されますが、それで生涯の生活を豊かにするものではありません。勲章は美しく、天皇陛下や大臣等から頂ける感激はもちろんあるのでしょうが、それだけなのです。

 世界中を見渡しても、勲章に年金や一時金がついてこない国はほとんどありません。しかし、我が国では憲法が「国のためにいくら頑張ったとしても、名誉(と気持ち)だけしかあげられない」と規定しているので仕方ありません。ネットでは「働いたら負けと思っている」という言葉をよく聞きますが、こういうところにも我が国を弱体化させる罠が仕掛けられていたような気がしてなりません。戦後、GHQによって1週間で方向性を決められた日本国憲法ですが、日本人の気概を削ぐ効果は高かったようです。

 優秀な人材は国境を越えて世界が奪い合います。様々な好条件で誘致されるのです。戦後70年間、我が国は頑なに憲法改正を拒んできました。が、その条文のもたらす効果を私たちは深く考えてきたのでしょうか? 勲章1つとっても現行憲法には様々な問題があります。まずは1項だけでも、とにかく憲法改正に手を付けなければならないと思います。

◆「グリコのおまけ」と呼ばれる防衛記念章

 皆さんは自衛官の胸についている小さなリボンのような「防衛記念章」をご存じでしょうか? これは自衛官がその経歴を記念して制服に着用することができる「き章」です。勲章の代わりに勲章をぶら下げるリボン(略綬)を、真似て作ったものですが、自衛官はこれを揶揄して「グリコのおまけ」と称しています。

 そんな名前を付けてしまう気持ちはよくわかります。「勲章でないもの」を勲章に見せかけるための必死の工夫を見るにつけ、そのチープな発想と現状がとても悲しく残念に感じられます。憲法改正が国民の合意を得て成立した暁には、自衛官(隊)もその存在が合憲となるわけですから、現役時に堂々と勲章をもらえるようにしたいものです。頑張った人が報われる国になるために、憲法改正後には必ずこの制度を変えてほしいと切に願っています。<文/小笠原理恵>

【小笠原理恵】

国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰

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