新幹線の手荷物検査、「51%超が導入賛成」なのにJR東海が拒否する理由

週刊ダイヤモンド2018年10月6日号第1特集は「新幹線vs飛行機 十番勝負」。ライフスタイルの変化や技術革新により、時間や運賃が中心だった「乗り物選びの基準」は多様化した。それを踏まえて、週刊ダイヤモンド編集部では10の切り口で”移動の覇者”の決着をつけた。今回、特集から新幹線と飛行機のセキュリティーについて対決させた記事を、ダイヤモンド・オンラインで特別公開する。手荷物検査の是非が問われている。
● 17年末までに防犯カメラ設置も 繰り返される悲劇

 「ふざけるな、このやろう!」「落ち着いてください、武器を捨ててください」。席に座っていた不審者が突然、凶器を振り回す。現場に駆け付けた乗務員が盾を持って防戦する。

 8月、JR東海は「不測の事態に対する現場の教育訓練」の様子を公開した。実際の新幹線車両を使ってのデモンストレーションには、乗務員や警備員のみならず、鉄道警察まで参加する力の入れようだ。

 新幹線の安全神話を崩す事件が相次いでいる。2015年には東海道新幹線の車内で男が焼身自殺を図り、火災が発生。今年6月には男が刃物を振り回す無差別殺人事件が起きた。1993年にのぞみ車内で覚せい剤常用者による刺殺事件が起きて以来の大惨事だ。

 JR東海は焼身自殺事件を受けて、17年末までに全編成の9割に防犯カメラを設置したが、抑止力にはならず悲劇は繰り返された。

● 51.2%が新幹線で 手荷物検査導入賛成

 抜本的な保安対策として、手荷物検査の是非が問われている。欧州の一部でも検査が実施されているし、中国の高速鉄道では検査どころか身分証の提示まで求められる。JR東海は「乗客の利便性を損なう」(金子慎社長)ことを理由に検査をかたくなに拒否しており、導入の検討すらされていない。

 確かに、JR東海の言い分は一面では正しい。利用者アンケートでも、半数以上が「検査を導入すべき」としながらも、その大半が許容できる検査時間は10分だ。

 東海道新幹線の強みは、1編成で1300人を運べる大量輸送と定時運行だ。この強みを発揮させた効率運行は、乗客の便益であると同時にJR東海の利益の源泉でもある。検査の実施は、効率運行で稼ぐ新幹線のビジネスモデルを崩壊させるインパクトがあるのだ。

 検査の可否は、リニア中央新幹線でも試されることになろう。「リニアは品川も名古屋も新駅。検査スペースが確保できないことが導入不可の理由にはならない」(木村嘉男・元JTB時刻表編集長)からだ。仮にリニアで検査を実施すれば、スピードで飛行機を追い越すはずだった夢がついえてしまう。

 しかし、である。一連の事件を通して新幹線の安全対策には抜け穴があることを、世界中に知らしめてしまった事実は重い。世界から注目されるリニアは、テロリストの格好の標的になり得るだろう。

● 飛行機は「テロに強い空港」 目指して対策強化中

 遅々として進まない新幹線のセキュリティー対策を尻目に、飛行機は国際線事業で培った保安対策を国内線にも導入し、先を行く。さらに東京五輪に向けて国と空港、航空会社、そして検査受託会社が一体となり「テロに強い空港」を目指して対策を強化中だ。

 例えばボディースキャナーや高性能X線検査装置、爆発物検査装置など先進的な機器は、床の耐荷重工事も含めて最大で1台数億円もの投資になるが、国による補助も追い風となり導入が進む。

 ANAは独自の手法で検査の時短化に取り組んでいる。従来、保安検査員が搭乗券確認と検査の二つをしていたが、ANAスタッフを増員し検査場のレイアウトを変更することで、時間短縮につながった(下図参照)。

 飛行機は航空法で保安検査の実施が定められている。検査を通過した乗客や荷物を業界用語で「クリーン」というが、新幹線との最大の違いは航空会社がクリーンに対して責任を負っていることだ。保安強化と時間短縮の両方で改善を重ねることが、結果的に顧客満足度を上げることになる。

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