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zoom RSS 連邦法の拡大で、ケネディ大統領の名演説が皮肉に聞こえる?

<<   作成日時 : 2018/10/15 20:31   >>

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ケネディ大統領が暗殺されたとき、「大統領を殺してはいけない」という法律はなかった。そんなものが必要なのかという声が聞こえてきそうだが、ちょっと待って欲しい。

法律がなかったゆえに、犯人のオズワルドは、(生きていれば)事件のあったダラス、つまりテキサス州の裁判所で(普通の)殺人罪の裁判を受ける予定だったのだが、これはいまのアメリカの感覚からするととても奇異なことなのだ。

連邦政府を代表するトップの人間を警備し、スケジュールを立て、あらゆるケアをするホワイトハウス(連邦政府)にとって、そのトップの殺人事件を、州法の裁判所で裁かれるのは不都合が多い。

まず、州法違反容疑であれば、FBIは捜査もできない。そして、大統領を暗殺するという最大級の社会的影響を合衆国に与えても、その州が死刑制度を破棄していれば、被告人は無期懲役どまり。抑止効果も弱くなり、次の暗殺計画を呼び込むことにもなりかねない。さらに、自分たちはどこまでも被害者の関係者であって、原告(検察)にもなれずに、傍聴席に座るだけで、裁判になんの影響力も行使できない。

こうしたことから、ケネディ大統領が暗殺された後、連邦政府は「大統領を殺してはいけない」という法律をつくる。さらに、ケネディ大統領の弟で、当時、大統領への有力候補であった、ロバート・ケネディ上院議員が暗殺されると、今度は「連邦議員を殺してはならない」という法律をつくった。

州をまたいだ途端に逮捕も

アメリカは、イギリスから独立した経緯からして、もともと中央政府を信じず、ローカル政府にこそ権限が与えられるべきだという精神で建国されている。だから、連邦法にできるだけ権限を与えず、州の独自性を重んじ、州法の自由度を憲法で尊重してきた。

今日、全米の犯罪の90%以上は、州の裁判所で州法違反として裁かれている。しかし、ケネディ大統領の暗殺のように、ひとつひとつの具体的事象をもって、連邦政府は連邦法の管轄範囲をじわじわと広げているというのが現状だ。実は、この連邦vs州の闘いが、アメリカの「国のかたち」を確実に変化させている。われわれ日本人にはとてもわかりにくいところだが。

民事を見ても、かつては商取引のほとんどは州内でのできごとなので、州法のなかでの係争となったが、アマゾンのようにeコマースが進み、州外取引が活発になってくると、これは連邦法管轄になる。

このダブルスタンダードは、近年、ますます激しくなってきた。たとえば、大麻の合法化問題だ。大麻は、いかなる場合でも、その所持も使用も連邦法は禁止している。しかし、いまやほとんどの州で医療目的の使用を許可し、さらに29の州では、この何年かで娯楽利用を認めるに至っている。

たとえば「娯楽用大麻許可」の先駆者であり、中心地ともなっているコロラド州デンバーで、町中で大麻を買った人間がデンバー国際空港に行くとどうなるか? 

セキュリティチェックポイントを過ぎたとたんに、そこからは連邦政府管轄となるので、当然、彼のバッグに入っているそれは非合法薬物となる。実際に逮捕も起きている。

運転免許証はIDにならない
あるいは、完全に合法な大麻栽培工場をつくるべくローンを組もうとしても、上記のような「いつ、突然に連邦法が入り込んでくるかわからない」という危惧から、銀行は工場への融資はしない。非合法薬物製造に加担した金融機関は、連邦法では金融免許の取り消しだけでなく、刑法上、民事上での大きなリスクを負う。

さらには、幹細胞のうちの胚性幹細胞による再生医療の研究では、連邦政府は「研究のために受精卵を殺すことになるとして非倫理的だ」として研究を認めず、研究費を打ち切りにした。それだけにとどまらず、研究を違法としていない州の研究機関であっても、連邦政府からの(別のプロジェクトに対する)補助金をカットするというプレッシャーのため、研究はままならない。

加えて、州の専管事項である自動車運転免許証の発行も(連邦免許証なるものはこの世に存在しない)、独自のスタンダードで本人確認をして、独自のデザインと独自の道路交通法で免許を付与してきた。

しかし、全米各地の空港では、連邦施設であることを理由に、身分証明書として運転免許証は認めず、連邦政府のスタンダードを満たした本人確認ができる証明書でなければ通さないというように法律を変えた。これは空港に入りたければパスポートを持ってこいということなのだが、これを持たないアメリカ市民も少なくない。

この法律は、2020年からの施行となったので、この「脅し」に負け、妥協するかたちで、各州は、連邦政府スタンダードの運転免許証と、各州スタンダードの運転免許証と2種類発行する体制に移行しつつある。前者を「リアルID」と呼ぶことになったが、では後者はリアルじゃなくてフェイク(偽物)なのかと、あいかわらずネーミングセンスの悪さに笑うしかない。

トランプが選ばれた理由もココにある

このように、中央政府など信用できないとしてイギリスから離脱し、戦争までして独立して建国したアメリカだが、連邦政府は予算と権限を肥大させる戦争に勝ち続けている。これがアメリカ文化を大きく変化させてきている。

ケネディ大統領は就任演説で「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか」と、アメリカ伝統のパイオニア精神を市民に訴えた。しかし自己肥大化していく現在の連邦政府を見ていると、この国に頼らないパイオニア精神を促されることほど、皮肉で矛盾していることはない。

トランプが大統領に選ばれた背景のひとつもここにある。選挙民から見て、連邦政府の自己肥大を止めうる候補者が他に誰もおらず、ベテラン政治家ではなく、「政治家や連邦政府なんてロクなもんじゃない」と悪口を垂れ流す人物にしか、肥大は止められないだろうと考えたのだ。

ちなみに、みなさん、万が一にも29ある合法州で大麻を興味本位で吸うことはやめたほうがいい。みなさんは合衆国に入国する際に、連邦政府に対して非合法薬物の非摂取を約束して入国しているのだ。どこで摂取してもその行為は移民法違反となり、逮捕または強制送還の対象となり、二度とアメリカに入国できなくなるので。

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