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zoom RSS 「許されざる取材」の記者3人、ロシアに消されたか

<<   作成日時 : 2018/08/06 06:15   >>

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 7月30日、中央アフリカ共和国で取材中だったロシア人ジャーナリスト3人が、車両で移動中に待ち伏せ攻撃を受け、殺害された。

【写真】殺害された3人の記者、オルハン・ジェマリ氏、アレクサンドル・ラストルグエフ氏、キリル・ラドチェンコ氏

 3人はベテランのフリー記者であるオルハン・ジェマリを中心とする取材チームで、反プーチン派の元実業家であるミハイル・ホドルコフスキーが創設した調査機関「調査管理センター」(ICC)の依頼で取材活動をしていた。

 ジェマリらがそのとき追っていたのは、ロシアの民間軍事会社「ワグナー・グループ」である。ロシアは今年(2018年)2月、中央アフリカ共和国の国軍の軍事顧問や大統領警備要員など180人を派遣しているが、それに関連して、ワグナー・グループも投入された疑惑が浮上していた。3人はその実態を探るために中央アフリカ共和国に入っていた。

 襲撃犯は約10人の武装グループだったが、その正体はまだ不明だ。プーチン政権の宣伝機関に等しいロシアのメディア各社は、強盗説や地元ゲリラ説を盛んに流している。だが、殺害の動機が最も高いのは、当然、取材対象のワグナー・グループもしくは、その動きを察知されたくないロシア軍当局だろう。

■ ロシア軍のダミーとして設立された傭兵部隊

 もっとも、ワグナー・グループとロシア軍は、一体化した関係にある。ワグナー・グループは、形式上は独立した民間軍事会社だが、その実態は、ロシア軍の情報部門である軍参謀本部情報総局(GRU)が海外で運用する「傭兵部隊」だ。欧米系の他の民間軍事会社のように独自にクライアント企業と契約して活動することはなく、もっぱらGRUの手配で、ロシア軍の東ウクライナやシリアなど海外での作戦の一部を代行している。ただし、その要員はロシア軍の正規兵の偽装ではなく、主にロシアの貧しい地方などで募集された民間の雇い兵が主力となっている。

 ワグナー・グループは、設立が2014年という比較的新しい会社だが、その前身組織は前年の2013年に設立された「スラボニッチ軍団」という組織だった。この組織は、もともとロシアの総合警備会社「モラン・セキュリティ・グループ」が母体となり、戦時下のシリアで活動するために創設された。

 当時、ロシアはシリアのアサド独裁政権を政治的に強力に支援してはいたが、まだ直接の軍事介入をしていなかった。そのため、軍事的な直接支援をロシア軍がそのままするわけにはいかず、ダミーが必要とされたのだ。

 翌2014年、シリアで活動するさらに本格的な傭兵会社として、スラボニッチ軍団を拡大するかたちで、ワグナー・グループは設立された。

 ワグナー・グループは、同年に勃発したウクライナ紛争にも投入されている。ウクライナでも表向きは、ロシア正規軍が活動していないことになっていたため、こうした部隊がウクライナ介入には必要だったのだろう。

 その後、ロシアは2015年9月からシリアに直接、軍事介入するが、ワグナー・グループはそのままシリア各地に投入された。ロシア正規軍は航空機による無差別空爆などを主に行っていたが、ワグナー・グループは、アサド政権軍とともに地上戦を担当した。もちろんシリア駐留ロシア軍司令部のGRU出先機関の指揮下にある。

 2018年2月7日、このワグナー・グループが主導するロシア=アサド政権合同軍が、米軍が支援するクルド人部隊を襲撃し、米軍の空爆によりワグナー・グループのロシア人兵士が数十人以上戦死(300人という情報も)するという事件があった。ワグナー・グループの存在が国際メディアに大きく注目されるようになったのは、この事件がきっかけである。

■ オーナー、プリゴジンとクレムリンの関係

 こうしてGRUの別動隊として海外で活動するワグナー・グループだが、その指揮官は、元GRU特殊部隊中佐のドミトリー・ウトキンという人物である。彼はGRUを辞めてから、エフゲニー・プリゴジンという起業家の護衛を務めていた。彼はそのままプリゴジンの側近となっており、このワグナー・グループの設立・運用資金もプリゴジンが出している。つまり、ワグナー・グループのオーナーが、プリゴジンである。

 プリゴジンは単なる出資者ではない。たとえば、前述した2018年2月のシリアで米軍との戦闘時には、プリゴジンがその件に関して、ワグナー・グループ本部および、クレムリンと頻繁に連絡していたことが分かっている。つまり、紛争現場でワグナー・グループは現地のGRUの指揮下にあるが、オーナーのプリゴジンも直接、クレムリンの指示を受けているのだ。

 このプリゴジンとクレムリンの関係は、きわめて特殊な関係だ。プリゴジンはもともと食品関係の企業経営者だが、プーチン大統領と個人的に非常に近い。むしろプーチン大統領との個人的な人間関係を元に、軍や公共施設への食料供給などで財を成し、富豪に成りあがっている。

 いわばプーチン側近の「政商」といっていい人物だが、彼は単にそうした利権だけでプーチン政権と繋がっているのではない。ロシア情報機関の非公然活動に深く関与している。

 例えば、ロシアが2016年の米大統領選に介入したことが大きな問題になっているが、その中で、SNSなどでフェイク・ニュースを拡散するなどしてアメリカの世論誘導を行っていたサンクトペテルブルクの民間企業「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」は、プリゴジンの会社だ。表向きは民間企業だが、その活動は当然、ロシア情報機関の非公然活動の一部である。つまり、プリゴジンはクレムリンの政商であると同時に、ロシア情報機関のダミー活動も担っているのだ。

 このIRA社もワグナー・グループも、タテマエとしては民間企業だが、その実態はロシア情報機関の一部である。というより、ロシア情報機関が表向きのダミー企業を必要とする際に、プーチン側近のプリゴジンが協力するという関係なのだろう。

 もっとも、プリゴジンはプーチン個人に直結する側近だから、彼の活動は逐一、プーチンに報告され、その指示を受けているはずだ。逆に言えば、彼はプーチンの海外での謀略の代理人ということになる。もちろんロシア情報機関の配下という立場よりは上だろう。資金面も、プリゴジンが持ち出すというよりは、むしろロシア情報機関の活動資金がプリゴジンに入る仕組みになっていると思われる。

 むろん利権の獲得もあるはずである。例えば、プリゴジンはシリアにおいて、ロシア軍およびワグナー・グループの支援でアサド政権がISから奪還した東部の油田地帯の利権を手中にしたとも報じられている。

 なお、今年2月16日、米大統領選で不正な介入をしたとして、プリゴジン本人とその部下の計13人、およびIRA社を含むプリゴジン所有の企業3社が、アメリカの大陪審で起訴されている。プリゴジンの個人的経歴や、IRA社の選挙介入の詳細については、拙稿「FB記事3517本で米大統領選を操作したロシア組織」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53083)を参照されたい。

■ ワグナー・グループに近づく者は消される? 

 ワグナー・グループは、こうしたいわくつきの傭兵集団である。その活動の実態が暴かれることは、ロシア情報機関の非公然活動が暴かれるということになる。汚い手法が暴かれれば、もちろんそれを命じた側であるプーチン政権の失点になる。

 また、オーナーであるプリゴジンの活動の実態が暴かれることは、下手をすればプーチン個人の汚職の暴露にも繋がりかねない。ワグナー・グループとプリゴジンは、ロシアではいわばアンタッチャブルな存在なのだ。

 だからこそ、今回、プーチン政権と敵対する富豪のホドルコフスキーが、その実態の調査にベテランのジャーナリストを雇い、わざわざ中央アフリカ共和国まで派遣したわけだが、それがどれだけ危険なミッションかは言うまでもない。ロシアの場合、プーチン政権に批判的なジャーナリストや活動家の暗殺は日常茶飯事だが、今回は相手が武装集団で、しかも法の秩序がほとんどないような中部アフリカの紛争国である。前述したように犯人はいまだ不明だが、「消された」可能性がきわめて高いと言っていいだろう。

 ちなみに、ワグナー・グループを調べていた記者が変死した事件は、これ以外にもロシア国内で数か月前に起きている。今年4月12日、ウラル地方スベルドロフスク州のエカテリンブルクでのマクシム・ボロジンの転落死事件だ。

 ボロジンは独立系ニュースサイト「ノービ・デン」の記者だったが、その日、アパート5階にある自室から転落し、3日後に病院で死亡した。転落した経緯は明らかではないが、遺書などは残されておらず、勤務先も「自殺の理由はない」と明言している。また、友人の一人は、転落死前日の午前5時にボロジンから電話を受けており、「バルコニーに銃を持った男がいて、階段にはマスクを被った迷彩服姿の男たちがいる」との話を聞いている。

 ボロジンは当時、ワグナー・グループについて記事を書いたばかりだった。前述した2月7日のシリアでの戦闘について取材し、死亡したロシア人傭兵のうちの3人が、スベルドロフスク州出身だったとスクープしたのだ。

 ボロジンがワグナー・グループ関係者、もしくはプーチン政権当局に暗殺されたとの証拠も、今のところない。しかし、ワグナー・グループに迫ろうとする人間は誰であれ、命を狙われることを覚悟しなければならないだろう。

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