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zoom RSS 働き方が多様になる中で、「労働者派遣」はどう位置づけられるか

<<   作成日時 : 2018/07/27 23:41   >>

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労働者派遣を振り返る
 約3年前の2015年9月30日に改正労働者派遣法が施行されました。これにより労働者派遣法に関する考え方が大きく変わりました。改正前は労働者派遣をネガティブにとらえていたのですが、改正により労働者派遣をポジティブにもとらえたのです。

(※同じ連載の他の記事は、画面下の【関連記事】からご覧ください)

 1986年7月に労働者派遣法が施行されました。それ以前には労働者派遣はなかったのです。当初は事務用機器操作、ファイリングなどの13業務が解禁され、1996年改正でアナウンサー、書籍等の制作・編集などの業務が加わって26業務となりました。労働者派遣は原則禁止され、一部業務に限って解禁されました。これは、労働者派遣が正規雇用者などの雇用の場を奪うものとして位置づけられ(「常用代替の防止」)、このおそれの少ない専門的知識や特別の雇用管理を必要とする業務だけが労働者派遣の対象業務となりました。

 その後、1999年改正では原則と例外が逆転して、労働者派遣は原則自由であり、例外として警備業務、建設業務などが禁止されることになりました。しかし、26業務以外の業務(「自由化業務」または「一般業務」と呼ばれた)については3年の期間制限が設けられました。この期間制限の趣旨は、3年経過したら正規雇用者などの常用にその雇用の場を戻すというものでした。2004年からは「物の製造」業務についての労働者派遣も解禁されました。

 ここまでは、労働者派遣は常用代替となり得るネガティブなものとされていました。この背景には、労働者派遣は「非正規」の一つであるという見方が強かったのでしょう。派遣労働者が正規雇用者に転じることが望まれました。

 しかし、2015年9月30日に施行された法改正では、このような考え方が大きく転じました。労働者派遣という働き方を積極的に肯定します。このうえで、労働条件の不合理な相違を禁止します。労働者派遣という働き方を「非正規」とみる考え方は後退したのでしょう。一方で、正規雇用にも変容を迫ったのが、その後の「働き方改革」です。正規と非正規という二極で考えるのではなく、多様な働き方の「器」を労働者の各々が選択する時代に入っていきます。

 この現行の労働者派遣法は、派遣労働者が派遣元(派遣会社)で有期雇用されているか、無期雇用されているかで規制が異なります。派遣元で無期雇用されている場合、特段の規制はありません。これに対し、派遣元で有期雇用されている場合、当該派遣労働者、すなわち同一派遣労働者を同一の組織単位(例:課、グループ)で3年を超えて受け入れることはできません(派遣労働者の「個人単位」の期間制限)。同一の組織単位では同一の派遣労働者の受け入れは3年以内です。

 もっとも、その後に、同じ会社が同一の派遣労働者を別の組織単位で受け入れることはできます。たとえば、派遣先のA社は派遣労働者であるBさんを、最初の3年は総務課で受け入れ、次の3年は営業課で受け入れることができます。派遣労働者の個人単位での受け入れ期間について同一の組織単位で3年を限度とする趣旨は、指針では「派遣労働者がその組織単位の業務に長期間にわたって従事することによって派遣就業を望まない派遣労働者が派遣就業に固定化されることを防止することにある」と記載されています。派遣労働者のキャリアアップのためなどと説明されることもあります。

 現行法では、派遣先は、派遣元で有期雇用された派遣労働者が働く派遣先において、事業所単位で、派遣受入期間を3年から延長しようとする場合に、事前に、過半数労働組合等から意見聴取することが求められています(派遣先の「事業所単位」の期間制限)。この3年の起算点は、当該事業所で2015年9月30日に施行された改正労働者派遣法の適用を最初に受けた派遣労働者の受け入れ日です。この意見聴取にあたっては「充分な考慮期間の設定」が求められているので、派遣先は早目に手続を開始することが適切です。反対意見(異議)であっても延長が認められないことはありませんが、その場合の詳細な手続が努力義務または義務として省令等に記載されています。この意見聴取は、労働者派遣にはその事業所における常用代替のおそれがある、とする考え方が残っていることを示すものでしょう。

どこに誰を派遣するかは派遣元が決定する
 労働者派遣は、派遣先がどの就業場所・組織単位、業務に何名を派遣してほしいと要求し、派遣元がこれに応えて具体的な派遣労働者を派遣する仕組みです。労働者派遣法26条6項は「労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。」と規定します。紹介予定派遣である場合を除き、特定することを目的とする行為が制約されます。

 このことは、派遣元で有期雇用されている派遣労働者が、最初の3年間は総務課に派遣され、次の3年間に営業課に派遣される場合も同様でしょう。派遣先が派遣元に対し「特定することを目的とする行為」が制約されるのです。3年経過後にどの派遣労働者をどこに派遣するかは、派遣元が専権的に決定します。派遣先が関与することにはリスクがあります。

 同一の派遣元が派遣先の一事業所に多数の派遣労働者を派遣している場合、派遣労働者ごとに派遣者個人単位の期間制限は到来するので、派遣元が一方的に派遣労働者を入れ替えることは事実上困難でしょう。派遣先の同一の事業所に多数の派遣元が1名ずつ派遣労働者を派遣している場合、派遣先としては就業場所・組織単位ごとに派遣元を入れ替えることが考えられます。しかし、派遣労働者ごとに個人単位の期間制限は到来するので、入れ替えのタイミングは異なります。何よりも、実務の現場はそんなに単純なものではありません。今後、混乱することが予想されます。

 おそらく派遣先にとっては、事業所ごとに派遣元を一社に絞って、このような期間管理を同期して行うことが適切なのでしょう。基準日を決めて、派遣元が派遣労働者を一斉に入れ替えます。そのために、個別の派遣契約書の派遣期間の終期を統一します。これは、派遣元、すなわち労働者派遣事業者が選別されて優良な労働者派遣事業者により派遣労働の市場が形成されることを企図した2015年の法改正と親和性を有します。それまでは届出で足りたことにより弱小・零細の派遣事業者が多数存在しましたが、すべての労働者派遣事業者が許可を要することになったことで、変化が生じつつあります。

派遣労働者が無期転換する
 派遣労働者は派遣元において有期で雇用される場合と無期で雇用される場合があります。同一派遣元で5年を超えて有期雇用されると、派遣労働者は派遣元に無期雇用を申し込むことができ、派遣元の承諾がみなされる効果として、派遣元と派遣労働者との間に無期雇用が成立します。別段の定めがなければ、派遣元と派遣労働者との間の労働条件は有期雇用のときと同一です。

 派遣元のA社に有期雇用された派遣労働者Xさんが派遣先B社の総務課に3年間にわたり派遣された場合、同一の組織単位でなければ、たとえばB社の営業課に今後3年間にわたり派遣されることはできます。しかし、派遣元のA社での有期雇用が通算で5年を超えると、その有期期間の終了日の翌日からXさんは無期雇用となり得ます。B社の営業課に同じ派遣元A社から有期雇用されたYさんがいた場合、B社の営業課には派遣元A社の無期雇用のXさんと有期雇用のYさんが同時に存在することになります。

 このときの無期雇用のXさんと有期雇用のYさんの労働条件の相違には、労働契約法20条が適用されそうです。労働契約法20条は、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と比較して、有期であることに関連して、(1)職務の内容、(2)その変更の範囲、(3)その他の事情を考慮して、不合理であることを禁止するものです。派遣労働者という特性からも、(1)職務の内容と(2)その変更の範囲が同一であることもあります。そうなると、有期雇用のYさんの労働条件が無期雇用のXさんの労働条件と相違することは不合理な労働条件になり得ます。

 一方、これらの期間制限についての改正が施行された翌日である2015年10月1日、労働者派遣について、労働契約申込みなし制度が施行されました。これは、期間制限違反などの違法な労働者派遣である場合、派遣先が派遣労働者に対し、直接雇用の申込みをしたとみなされる制度です。この派遣先の申込みに派遣労働者が承諾すれば、派遣先と派遣労働者との間に労働契約が成立します。この労働契約の内容は、派遣元と派遣労働者の労働契約の内容と同一とされます。派遣元で有期雇用であれば、派遣先でも有期雇用が成立します。派遣元で無期雇用であれば、派遣先でも無期雇用が成立します。

 これとは別に、先日成立した働き方改革法の中には、派遣労働者についての均衡・均等待遇に関するものもあります。これらが複雑に関係することにより、派遣先が派遣労働者を使用することは、以前にも増して、難しい点が出てきているのが実情です。同一派遣労働者については3年限りという運用がされているとの報道があります。派遣労働者を雇用、そして働き方の中でどのように位置づけて整理するかが、あらためて問われざるを得なくなっています。

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