なぜ政治家とマスコミは「ダブスタ」に陥ってしまうのか

 先週、「W不倫疑惑」という文春砲を直撃して民進党を離党に追い込まれた政治家の山尾志桜里さんに対し、「ダブスタ」批判が寄せられている。

【事態を悪化させているのは?】

 自民党議員の不倫など不祥事を厳しく追及し、真摯に説明せよとご高説を垂れていたわりに、ご自身の疑惑については、同じく文春砲でゲス不倫が暴かれたベッキーさんのように、一方的な主張を読み上げて質問は一切受け付けないというスタンスが「ダブルスタンダード」(二重規範)なことこの上ないというのだ。

 確かに、「保育園落ちた、日本死ね!」で注目を集めた山尾さんは「子供と女性を徹底的に守る」という「ママフェスト」なるものを掲げ、子育て母親の代弁者として有権者の信頼を得てきた政治家である。「ママ代表」をうたって今のポジションを得たわけなのだから、その信頼を大きく損ねる疑惑に対して、ある程度の説明が求められるのは当然であろう。

 しかも、「ダブスタ」はけしからんということを少し前にも熱弁していたこともある。今年の頭、テロ等準備罪成立を推し進める安倍首相を以下のように厳しく追及していたのだ。

 「今言ったような、子どもの権利だとか人種差別禁止だとかヘイトスピーチだとか、人権を守るための条約の問題について、必ずしも新しい法律は要らないという態度をとり、一方で、今回のように、権力側の権限をどんどん拡大するような条約については、新しい法律、共謀罪が必要不可欠だと、こういうダブルスタンダードはおかしいのではないかと思いますけれども、総理、いかがですか」(1月26日、予算委員会)

 人の過ちや「ダブスタ」は許せないけど、自分に同じ批判が寄せられた場合は見逃してくださいな、というご都合主義感がどうしても漂ってしまうのだ。

 ただ、そんな山尾さんの「ダブスタぶり」がかわいく見えてしまうのが、マスコミや文化人の「ダブスタ擁護」である。

 自民党議員の不倫スキャンダルを痛烈に批判して「政治家失格」のレッテルを貼っていたマスコミや、情報番組のコメンテーターやら立派な方々が、今回は「政治家の不倫などたいした問題ではない」「政治家は結果を出せばいい」「いまの山尾叩きは異常だ」なんて調子で態度を豹変しているのだ。

●「ダブスタ擁護」に走るマスコミ

 コメンテーターや文化人のみなさんも人間なので当然、好き嫌いがあるだろうし、生きていれば考え方も変わっていくのでしょうがない部分もあるが、常日頃から「我、中立公正なり」とふんぞりかえっているマスコミが、「ダブスタ擁護」に走っているというのはハタから見ていてあまり気持ちのいいものではない。

 例えば、「不偏不党の地に立って言論の自由を貫き」というご立派な綱領を掲げる「朝日新聞」の報道が分かりやすい。

 2016年、宮崎謙介・前衆議院議員がやはり「文春砲」でゲス不倫を暴かれたとき、朝日新聞では「宮崎議員に不倫疑惑『育休拡大へ足引っ張られた』枝野氏」(2016年2月10日)と自分たちが突き止めた特ダネでもないのに、野党の批判コメントと抱き合わせて、はりきって盛り上げていた。

 翌日、社会面の「ニュースQ」というコーナーでも、「育休宣言の議員に不倫疑惑報道、影響は」(2016年2月11日)と以下のように小躍りしそうな感じでふれている。

 「国会議員もイクメンに――。男性の育休取得問題に、そんな一石を投じた自民党の宮崎謙介衆議院議員(35)。ところがその宮崎氏の不倫疑惑を10日発売の週刊文春が報じた。事実なら波紋はどこまで広がるのか」

 しかし、今回はうってかわって、あからさまにテンションが低い。

 「山尾氏、民進に離党届 交際問題報道」(2017年9月8日、朝日新聞)とそもそも「不倫」という表現さえ使わず、「同日発売の『週刊文春』が山尾氏と既婚男性との交際問題を報じたことを受け」なんて感じで、まるで反社会勢力と交際をしたかのような扱いとなっている。

 1年半前に宮崎氏をこきおろした「ニュースQ」はもっと露骨で、「不倫報道、なぜこんなに過熱?」(2017年9月8日)という見出しで、「それにしても、いまの報道の過熱ぶりは異常だ」とか「不倫は褒められたことではないが、批判できるのは身内だけではないのか」という有識者のコメントを取り上げて、世の山尾バッシングを沈静化させているようにさえ見える。

●自分たちが「正義」だという信仰

 自民党議員の場合は「不倫疑惑」という扇情的な見出しでボロカスに叩くのに、山尾さんは「交際問題報道」として騒動の沈静化を呼びかける。この「温度差」を見ると、どうしても我々のような一般庶民の頭には「ダブルスタンダード」という言葉が浮かんでしまう。

 そんなもん、山尾さんの場合は本人が不倫を否定しているから「交際問題」という表現なんだよという反論があるかもしれないが、つい最近、「新潮砲」の餌食になった自民党の今井絵理子さんについては「今井絵理子氏『軽率な行動おわび』『略奪不倫』は否定」(2017年7月27日、朝日新聞デジタル)という見出しで、本文も「同日発売の週刊新潮で同党の橋本健・神戸市議との不倫疑惑が報じられたことを受け」として、ご本人が否定しようがなんだろうが「不倫」という言葉を使っている。

 いやいや、そういうことではなく、単に文春の記事タイトルが「山尾志桜里 9歳下イケメン弁護士と『お泊まり禁断愛』」となっていて「不倫」の文言がなかったからだ、という意見もあろうが、「禁断愛」の類語を辞書で調べても、「不倫」「浮気」「情事」などが並ぶだけで「交際問題」などという奥歯にものが詰まったような表現はない。

 そもそも、不倫だけではなく、甘利明・前経済再生相の疑惑も含め、政治スキャンダルの大半が週刊誌の記事を「報道引用」させてもらっている立場であるにも関わらず、ニュースソースが「禁断愛」だと報じているものを、勝手に「交際問題」と言葉を変え、本家が報じた内容よりもトーンダウンした印象を世の中に広めるのはいかがなものかという気がする。

 少し前、安倍首相が野党の追及をかわす際に使っていた「印象操作」という言葉を「天声人語」などがうれしそうにけなしていたが、「情報操作」(スピンコントロール)の世界では、このようにメディアが原文を自分たちの都合のいいように解釈し、「意訳」して広めることも「印象操作」と呼んでいる。

 では、なぜマスコミといい、山尾さんといい、「ダブスタ」にまんまとハマってしまうのか。いろいろなご意見があろうが、マスコミの言動などをつぶさに観察している身からすると、自分たちが「正義」だという信仰にも近い思い込みが深く関係していると思う。

 マスコミも山尾さんも「権力=悪」で、「それと対峙する我々=善」という、「アベンジャーズ」などのマーベルヒーローたちも真っ青な、単純な善悪二元論にとりつかれているのだ。

 自民党議員も民進党議員も背中についているゼッケンの色が違うだけでも、同じ政治システム、同じ選挙制度のなかで生まれた同じ穴のムジナに過ぎないのに、その事実が受け入れられない。だから、民進の批判はそのまま「ブーメラン」になる。

 マスコミも同様で、とにもかくにも「反権力」をうたうが、実は自分たちも絶大な特権をもっている。一般庶民だったら警備員のみなさんに取り押さえられてしまうようなところでも、マスコミの記者というだけで顔パスで入れる。フリーのジャーナリストではアクセスできないような情報も得られる。幹部になると、総理大臣やら政治家と会食をして、ああでもないこうでもないと国家天下を論じることもできる。権力者が権力者にいろいろ注文をつけながら、時にボロカスに叩くという「内ゲバ」のような構図なので、庶民にはどうしても気の抜けたプロレスを見せられたような八百長感が漂う。

 そういう「同じ穴のムジナ」問題に加えて、「ダブスタ」に拍車をかけているのが「特権意識」だ。

 テレビ局の場合、新規参入業者を国が阻んでくれているし、新聞は「公共」の名のもとで、軽減税率のお目こぼしもある。こういう特別待遇を受けながら、一方で「権力叩き」を何十年も続けていれば、「自分たちは選ばれし特別な存在だ」という勘違いするなという方が無理な話だ。

●「正義」をこじらせた結果……

 ちなみに、この「勘違い」こそが、大きな震災が起きるたび、現地でマスコミが被災者から大ブーイングの「報道被害」を繰り返す最大の理由である。

 ご存知のように、山尾さんは元検察官だ。悪を断罪する「正義」の番人だったくらいだから我こそ正義だという自負があるというのは容易に想像できよう。そんな山尾さんを擁護しているマスコミも、そこで働く人たちは己を「正義」だと信じて疑わない。

 こういう人たちが「ダブスタ」のワナに陥りやすいというのは、「正義」が大好物なアメリカなど西側諸国の言い分を見てみると、よく分かる。

 おととい、フランスが北朝鮮の核を「欧州の脅威」だと批判した。それを聞いた北の高官は、「核兵器がそんなに悪いものだというなら、まずは核の脅威に全くさらされていないフランスが核兵器を放棄せよ」(9月10日、AFP)と西側諸国の「ダブスタ」を持ち出して反論したという。日本人としては北のやっていることは決して容認できるものではないが、「国際社会」という名の一方的な正義を押し付けられ、意固地になっている北の姿はかつての日本と妙に重なる。もちろん、共感はしないが、彼らの言いたいことも分からんでもない。

 お前らは悪者だからダメだけど、我々は善人だから許される――。「ダブスタ」のワナとは、「正義」をこじらせたところから始まるのかもしれない。

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この記事へのコメント

2019年11月01日 11:36
ダブスタといえば、先日、菅原経産相が香典問題で辞任しましたが、過去に同様のルール違反を犯した立憲民主党の山尾志桜里議員はいまだ国民に謝罪していません。辞職もしていません。
山尾議員はいつ、国民に謝罪するのでしょうか。
自分は良くて他人はダメなんていうダブルスタンダードは絶対に許せません。
山尾議員の香典問題は過去に国会でも追求されています。

以下国会会議録から引用〜

○馬場委員 提案型実行政党、おおさか維新の会の馬場伸幸です。
(中略)
山尾議員は、自身の選挙区内の有権者に対して

花代や香典というものを合わせて四万四千円余り支出していた
花代や香典というものを合わせて四万四千円余り支出していた
花代や香典というものを合わせて四万四千円余り支出していた

と記者会見でこの間説明をされました。加えて、山尾議員は、自身が支部長を務める政党支部であれば花代や香典を支出しても公選法では禁止をされない、こういうことが民主党の、民進党の、名前がころころ変わってよくわかりませんが、民進党の統一見解でありますというふうにおっしゃいました。

ソース 第190回国会 予算委員会 第20号
https://kokkai.appri.me/content/198164/179

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