心の再生へ 歩み始めた被災地の美術館

東日本大震災から4カ月余り経ち、被災地の美術館が再び歩み始めた。宮城、岩手、福島の県立美術館も、フェルメールの特別展に向け懸命に準備したり、地元ゆかりの若手に活躍の場を与えたり。予算などが不十分ななか、被災地の「心の再生」を願う夏を迎えている。

■宮城 フェルメール招致に情熱

 「フェルメールからのラブレター展」は当初、開催中の京都、12月に始まる東京の2カ所で開催される予定だった。企画を知った宮城県美術館(仙台市)は2年前、「ぜひ宮城でも」と提案。日本初公開の「手紙を読む青衣の女」など円熟期の3点が出品され、今年の開館30周年記念事業として最適と考えたからだ。

 東北でフェルメール作品が公開されたことは過去になく、有川幾夫副館長は「地方でもやれることを示したかった」と明かす。所蔵するアムステルダム国立美術館などから責任者が訪れ、室内温度の管理状況や警備体制を確認。昨年、開催が内定した。

 震災による建物の被害は免れたが、4月の余震で展示室のガラスが割れた。所蔵品はボルトで固定したり、免震台に載せたりしていたために無事だった。ただ、天井の強度などを点検するため、本館の再開は今月5日にずれ込んだ。

 この間、貸し出すアムステルダム国立美術館や米メトロポリタン美術館などから震災の影響について報告を求められた。同館は作品に被害はなかったこと、津波の心配はなく、建物が強固な岩盤の上にあることなどを示し、安全性に問題ないと伝えた。

 ただ、原発事故が収束していない事態を不安視する声も出たため、同館は、県内の放射線量の数値とともに「開催への強い情熱を理解して欲しい」とメッセージを送ったという。

 有川副館長は「求められるハードルは高いが、被災地に美術館があって良かったと感じられるものにしたい。鑑賞したうちの何人かでも元気になり、周りにも元気を与えるようになればうれしい」と語る。

 10月27日~12月12日開催。期間中、休館日なし。

■岩手 若手に発表の場

 目をむいた異形だが何となくかわいい布の人形、複雑な手描きの模様がまとわりついたクッション……。

 1970、80年代に生まれた岩手ゆかりの作家10人の約160点が、岩手県立美術館(盛岡市)の企画展示室を埋めつくす。今月2日に始まったこの展示が、震災後に掲げた通年テーマ「アートのチカラ、いわてのタカラ」の第1弾だ。

 吉田尊子主任専門学芸員は「今こそ自分たちの足元を見直す機会にしようと考えた」。県は震災後、今年度の復興費に充てるため同館の企画展の予算をすべて削った。「お金がないと何もできない美術館なのか」。学芸員7人は自問し、思い切って若手に発表の場を与えることにした。

 最年少で奥州市出身の菊池咲(25)は、動物園の動物の人間くさい表情を日本画で切り取る。「今までで一番大きな展覧会。作品を見て、未来を悲観しないで考えてもらえれば」

■福島 再開直後、にぎわう

 福島県立美術館(福島市)は、正面玄関の天井板がはがれるなど被害も多く、再開が4月下旬に。原発事故の影響で、今も職員が交代で敷地内50カ所の放射線量を10日ごとに測る。

 「福島の場合、まだ復興という段階じゃない」と伊藤匡学芸課長。今年度の事業費も半分余り削られ、展示の中心は所蔵品だ。それでも今月3日まで「ふるさと・祈り・再生」、23日からは「なごみのひとときを」と題し、福島の心に寄り添う作品をそろえる。

 再開後の1カ月間、入館者は前年比で2倍ほどになった。震災前から続くスタジオジブリの巡回展の人気も一因だが、入館者のアンケートでは「落ち着ける空間がほしかった」「日常生活の重苦しさを気分転換できた」という声が聞かれた。

 9月からは同館で、県内七つの美術館から所蔵品約80点をえりすぐり「がんばろう福島」を合言葉にした作品展を開く予定だ。

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