金総書記の元料理人、正恩氏の政策変更を疑問視

 バンダナとうす紫のサングラスを身につけた中年男性が、警備員に付き添われて記者会見場に現れた。たちまち、おびただしいフラッシュがたかれる。

 彼はロックスターではない。世界で最もなぞに包まれた一族に直接仕えた経験を持つ数少ない人物のひとりだ。


AFP/Getty Images
帯に幼少時の金正恩氏の顔写真を配した自著を掲げる藤本健二氏
 安全上の理由で偽名、「藤本健二」を名乗るこの男性は、北朝鮮の最高指導者、金正日総書記の自称・元専属料理人だ。

 先週ソウルで行われた記者会見で同氏は、最近の北朝鮮での権力構図の変化が、近い将来のポジティブな政策転換につながるとの考えに疑問を呈した。

 金総書記の後継者として浮上した、三男の金正恩(キム・ジョンウン)氏は、最終的に北朝鮮、特に国民を解放する必要に迫られるだろうと藤本氏は語った。だが正恩氏は党内での立場が弱いため、近い将来に実施に踏み切ることは不可能だという。

 少なくとも数年間は父親が定めた方針を継続する以外選択肢はない。そのため政策転換があったとしても、効果が表れるまでには10年は要する―――藤本氏はこう述べた。

 2001年に脱北して以来、藤本氏は自らが金王朝で送った日々を綴った書籍を4冊著している。03年に出版された回顧録「金正日の料理人---間近で見た権力者の素顔」は日本でヒットした。彼は、妻と2人の子どもを北朝鮮に残してきたという。3人の命運は、誰にもわからない。

 藤本氏によると、黒いトラックスーツのようなものをまとった小太りの北朝鮮の王子は、非常にカリスマ性のある人物らしい。「7歳のときから彼を知っているが、兄弟と遊ぶ時も常に中心的役割を果たし、生まれながら強力なリーダシップを備えていることははっきりと見て取れた」

 金政権の情報統制が徹底していたため、同氏は北朝鮮滞在中、強制収容所の存在を知らなかったという。「その当時は、罪を犯した国民は離島に連れて行かれる、ぐらいの知識しかなかった」と同氏は語っている。
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