【衝撃事件の核心】女性を狙う“第3の目”…007も真っ青の最新「盗撮」機器事情

カメラ付き携帯電話の普及などで盗撮被害の危険性が高まっている昨今、さらに女性の安心安全を脅かす“第3の目”が世間に広がりつつある。数々のスパイ機器が登場する人気映画「007」シリーズを彷彿(ほうふつ)とさせる、ペンや車のキーなどの形をした小型特殊カメラを使った盗撮事件が東京都内で増加傾向にあるのだ。背景にはネットや店舗を通じて簡単に入手できる気軽さがあるという。本来は防犯目的の販売だが、悪用防止のための法規制はなく、現状は事実上の無法状態といえる。新たな欲望の目を封じる方策はあるのか-。(福田涼太郎)
キーホルダー型も…大手量販店でも入手可能
 
 今年4月、都内の商業ビル3階にある書店。
 少女コミックコーナーで立ち読みをしていた高校生風の少女に、男が近づく。男は周囲を見回しながら、少女と背中合わせになる位置で立ち止まる。右手の手提げかばんを少女のミニスカートの下に差し入れ、しばらくしてその場を離れた。
 「何やってんだ。迷惑でしょう」
 様子を見ていた警備員が男を呼び止めた。事務所で盗撮行為を問いつめるも、「やっていない」と否定する男。しかし、かばんの外側のポケットに差し込んであったペンを指し、「それカメラでしょ」と指摘すると、男はぐうの音も出ない様子で黙りこくった。
 警視庁で調べると、ペンには小型カメラが内蔵され、スカートの中の下着を映した動画データが保存されていた。男のパソコンには別の盗撮動画約120点も残されており、同庁は都迷惑防止条例違反の疑いで、会社員の男(37)を書類送検した。
 「交際女性との別れ話や仕事のストレスで、2年前からペン型カメラを使って盗撮を始めた。一度やったらうまく映っていたのでやめられなくなった」
 男はこう動機を話し、週1回ペースで盗撮を繰り返していたことを明らかにした。ちなみに盗撮された少女は気付くことなく、すでに書店を後にしていた。
 同庁によると、カメラ付き携帯電話や撮影に時間がかかるピンホールカメラを除いて、小型の特殊カメラを悪用した盗撮犯が都内で摘発されたのは昨年が初めてとみられる。

同庁が昨年に摘発した同種の盗撮事件は2件。しかし、今年は10月上旬時点ですでに9件に上っている。使われたカメラはペン型のほか、キーホルダー型、車のキー型、小型レコーダー型とさまざま。犯行場所は駅構内や電車内、図書館や路上などだ。
 入手先についてはネット通販や東京・秋葉原の専門店が多く、中には「大手ディスカウントストアで仕入れた」と話す者もいた。
 「携帯電話と違って、ペン型などは盗撮行為が見つかっても言い逃れができる可能性がある上、最近は気軽に入手できる」
 特殊カメラによる盗撮事件が増えた理由について、捜査幹部はそう推察する。
海外のパパラッチも認める高品質
 
 なぜ、このような特殊カメラが流通しているのか。
 「脅されたり付け狙われたりしている人が、被害の証拠を押さえたいときに使うケースが多い」
 購入希望者からの問い合わせが増え、2年ほど前から特殊カメラの取り扱いを始めたという秋葉原の防犯機器専門店の担当者はそう説明する。
 ほとんどの特殊カメラには音声レコーダー機能も付いていることから、実際の被害の瞬間となると防犯カメラよりも特殊カメラが威力を発揮するらしい。
 また、風景写真として街中の自然な“表情”を撮影したいという人にもニーズがあるという。

秋葉原やネット上には先に挙げたタイプ以外に、腕時計型やライター型、衣服のボタン型などさまざまな種類の特殊カメラが並び、値段は機能によって5千円前後~数万円と幅がある。ほぼすべてが中国や台湾で生産されており、市販のデジタルカメラと比べても画質はそれほど遜色(そんしょく)がない。
 「(特殊カメラが)売れるようになったのは5年前から。新製品が出ると、ヨーロッパなど海外のパパラッチも買いに来る」
 別の電気機器販売店店長の説明が、その性能や人気の高さを物語る。
 ただ、盗撮犯罪に悪用される可能性があることについては、取扱店によって意識が異なるようだ。
 「盗撮には使われて欲しくない。『とにかく売れればいい』という態度はよくないし、うちは大量に仕入れて薄利多売を目指すというようなことはしない」
 前出の防犯機器専門店担当者は悪用防止のため、販売の免許制を導入することなどを提案する。
 一方、電気機器販売店店長は「そんなこと(悪用の可能性)を言っていたら商売ができない。客がどのように使うのかまでは関知できないし、買ってくれたらそれでいい」と語る。
 購入客への配慮などから個人情報の取得が難しいこともあり、業者側による自主規制は困難なようだ。

販売規制は必要か不要か…「国民で議論を」
 では、特殊カメラ販売に関する法整備がどうなっているかというと、現行法ではまったく規制がない。
 ある捜査関係者は「盗撮行為を助長する盗撮DVDやマニアのサイトなどが多い中、(特殊カメラの)販売が野放し状態になっているのは問題だ」と対策の必要性を訴える。
 現在はネットをはじめ、一部のドラッグストアやディスカウントショップなどでも取り扱われており、特殊カメラはさらに身近な存在となっているという。
 一方、プライバシー問題に詳しい田島正広弁護士は即座の法規制には慎重な姿勢を示す。
 「ただ害悪があるからダメというのではなく、プラス面とマイナス面をあわせて考慮し、特殊カメラが直ちに存在自体を否定されるべきものなのか考えることが重要だろう」
 殺傷能力があるわけでなく、正当な使用法もある限りは、議論を深めて世論の同意を得た上で規制をした方が好ましいという。
 「当面は特殊カメラの存在の周知を図り、(規制の必要性の有無を)見極めることが必要だ」(田島弁護士)
 技術の進歩と、それに伴う卑劣な犯罪の増加。女性にとって本格的な受難の時代に入ったのは間違いないようだ。
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