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zoom RSS ブロガー刺殺で"自粛"するのは大間違いだ

<<   作成日時 : 2018/06/27 09:15   >>

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6月24日、有名ブロガーで、オンラインメディア編集長の岡本顕一郎さんが福岡市で刺殺された。殺人などの疑いで逮捕された男は、犯行の動機について「ネット上のやりとりで恨みをもっていた」などと話しているという。報道ベンチャー「JX通信社」の米重克洋社長は「今回の事件は『個人の発信者』を対象にした言論テロだ。ブロガーなどが脅威を感じるのは当然だが、事件で萎縮することなく書き続けることが重要だ」と訴える――。

■イベント直後に起こった事件

 著名ブロガー「Hagex」として活躍していたオンラインメディア編集長の岡本顕一郎さんが、福岡市内のイベントに出た後、男に刺殺された。この事件が今、大きな波紋を広げている。

 朝日新聞などによると、Hagexさんは6月24日、福岡市内でネット上の炎上やトラブルやその対処法をテーマにしたイベントを開催。そしてイベント終了後、会場のトイレで犯人にナイフを刺され、その後病院で死亡した。犯人は現場から逃走したが、その後に交番に出頭し、逮捕された。

 時事通信によると岡本さんと犯人は面識がなかったという。だが以前、岡本さんが犯人について「匿名で誹謗中傷を繰り返している人物」だとブログで指摘したことから、岡本さんに恨みを持っていたという。

 岡本さんのブログは、インターネット掲示板に投稿された面白い書き込みを紹介するかたわら、ネット上の著名人の言動について、その矛盾やおかしさを厳しく指摘する書きぶりで有名だった。

 そうした記事はたびたびネット上で大きく拡散しており、その発信力が契機となって著書『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(アスキー新書)を出版するなど話題に事欠かなかった。岡本さんはネット上では「Hagex」と名乗り、本名を明かしていなかったが、今回の事件が報道されたことで、セキュリティ業界で有名な編集者だったことが明らかになった。

 ブロガーとして大きな知名度のある人物が被害者であっただけに、今回の事件は多くの読者やブロガーらに驚きと恐怖を伴って広がっている。

■言論に対するテロ、「個人の発信者」がターゲットに

 ネットの普及は、これまで発信力を独占してきたマスメディア以外の大勢の個人に発信の機会を与えた。一方で、そうした個人の発信者は機会と同時にリスクを負うことになった。

 具体的には、発信や言論の内容に起因するレピュテーション(風評)リスク、批評の対象となった人からの怨恨、あるいは私生活でのプライバシー暴露などだ。

 従来は、これらのリスクが発現するパターンとして、いわゆる「炎上」や掲示板・SNSなどでの悪質な投稿、訴訟、怪文書の流布、また時として(身体的危害を加えない形での)物理的な嫌がらせなどが知られていた。しかし、今回の事件では「殺害」という最悪な形で、言論・発信活動のリスクが発現してしまった。これはまさしく「言論に対するテロ」に他ならない。しかも、それが一個人を標的にして起きてしまったということになるから深刻だ。

 岡本さんと同様にリスクを背負ってきた著名ブロガーやインフルエンサーが恐れるのも仕方がない。犠牲者が岡本さんと判明した後、そうした人たちは「ひとごとではない」「私も気をつけます」といった趣旨の発言をしている。

■「気をつける」では事件は防げなかった

 しかし、今回の事件の経緯を振り返ると、彼らが物理的に「気をつける」ことができる方法はほとんどないことが分かる。時事通信によれば、岡本さんと犯人は殺害当日まで互いに面識がない状態だった。岡本さんからすれば、自分に殺意を持っている相手の顔が見えない状態だったわけだ。

 しかも、犯人は、岡本さんが登壇したイベント自体には参加しておらず、終了後に会場となった部屋を出た岡本さんを背後から刺したとされる。イベント終了後に、参加者でもない見知らぬ男に突然刺されたとすれば、状況としては、通り魔に不意に襲われるのと変わらない。これでは、仮にイベントで荷物検査や警備員の配置などを行っていたとしても、事件は防げなかっただろう。「気をつける」にも気をつけようがなかったのだ。

 従って、今後発信者が実際に「気をつける」ことができるとすれば、その最も単純な方法は発信・言論の活動を慎重にするか、やめてしまうことだ。いつ誰に殺意を伴う怨恨を持たれているか分からない以上、不用意に敵を作らない、または増やさないために発信活動に抑制をかけよう――。多くの発信者がこうした考えに至るのは仕方がない状況だ。

 さらに深刻なのは、今後ブロガーらが主催する「サロン」や「オフ会」などのイベント開催にも悪影響が起こり得ることだ。

 近年、著名なブロガーやインフルエンサーなどを中心に、オフラインでのイベント開催を通して、読者コミュニティの形成や収益化を図っていく動きが急速に広がっていた。岡本さん自身も、最近ではそうしたイベントに積極的に登壇していた。

今回事件が発生した福岡市内の起業支援施設も、そうしたコミュニティの「結節点」として頻繁に活用されていた場所だ。西日本新聞の報道によれば、事件後、福岡市はこの施設の一時閉鎖を決めた(6月26日より再開)。今回の事件の加害者・被害者双方が利用していたブログサービス「はてな」でも、主催するブロガー向けイベント(7月1日開催予定)を中止した。

 これらの動きはまさに、言論に対するテロの「効果」が表れたものだ。テロは発信者らを萎縮させるだけでなく、彼らの周囲のコミュニティをも破壊する。こうした萎縮は驚くほど速い速度で拡散し、今後のブロガーやネットメディアのあり方に暗い影を落とすことになるだろう。

■組織ジャーナリズムはテロにどう対抗してきたか

 新聞社や通信社、テレビ局といった組織ジャーナリズムは、その発信力ゆえに恒常的に暴力やテロの標的になってきた。彼らはこうした破壊活動にどのように対抗してきたのだろうか。

 日本国内で起きた対言論のテロとしては、31年前の朝日新聞阪神支局襲撃事件を含む、いわゆる「赤報隊事件」が最も有名だ。1987年5月3日(憲法記念日)に発生した、朝日新聞阪神支局襲撃事件では、小尻知博記者(当時29歳)が散弾銃で射殺され、もう1人の記者も負傷した。この事件は右翼活動家などの関与が疑われたものの、今日に至るまで犯人不詳の未解決事件となっている。

 この事件の発生直後の1987年5月5日、朝日新聞は「暴力を憎む」と題した社説を発表し、「われわれは、暴力を憎む。暴力によって筆をゆるめることはない」と宣言した。また、読売新聞も社説で「自由と民主主義を支える言論機関は暴力や脅しに弱腰になることは決してない」と記し、朝日新聞との連帯を示した。日本ジャーナリスト会議も「言論、報道の自由と民主主義に対する卑劣な挑戦で許すことはできない。(中略)再発を許さないための言論活動をいっそう強める」とした緊急声明を発表したほか、業界労組などによる緊急集会の開催など、テロに言論で対抗する動きが相次いだ。

 このように、これまで社会に強い影響力を発揮してきた報道機関は、業界全体で、言論に対するテロや暴力を「絶対に許さない」という強いメッセージを発信してきた。

 しかし、ブロガーは彼らとは異なり、それぞれが独立した「たった1人の発信者」だ。テロを通じて、大勢の「たった1人の発信者」が脅迫される場合、同じように言論で対抗できるだろうか。「私はテロを絶対に許さないし、テロに屈して筆を置くことはない」と言い切って、今後も事件前と変わらず強気で発信していくことが果たしてできるだろうか。

 著名ブロガーやインフルエンサーの多くが、岡本さんの犠牲を自分ごとに置き換えて恐怖を感じることは当然であり、それを責めることはできない。

■岡本さんの「芸風」の問題ではない

 一方で、今回犠牲になった岡本さんについて「恨まれた相手が悪い」「いじめられっ子の反撃だ」などといった趣旨の投稿も見受けられる。また、他の「炎上」の多い著名ブロガーやインフルエンサーに対して「芸風」の転換を要求するような投稿もある。

 確かに、岡本さんのブログでは、批評する相手に対する厳しい姿勢も多々みられた。ある種の敵が多そうな「芸風」であることは否めない。しかし、暴力はいかなる動機、理由をもってしても正当化されることはない。この期に及んで暴力を是認、ないしは肯定する意見を持つ人は、今一度想像力を働かせることが必要だ。

 もし、自分の気に入らない言論に対して、暴力やテロで報いることが許されるかのような言説が広まれば、それは結果として、自由にものが言えず、武器で(文字通り)命を懸けて果たし合う社会へとつながるだろう。その悪影響は必ず、暴力を是認したその人自らに返ってくる。

 その意味で、私たちがこうした悲劇に立ち向かうためには「テロは許さない」という社会的コンセンサスのもと、テロを是認する言説を強く、明確に否定することが必要だと感じる。岡本さん1人の問題に矮小化しないことが必要だ。結果として、多くのブロガーやインフルエンサー、読者らの萎縮が少しでも緩和され、自由な表現ができれば、それが岡本さんの犠牲に報いることにつながるだろう。

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米重克洋(よねしげ・かつひろ)
JX通信社 代表取締役。1988年(昭和63年)山口県生まれの29歳。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。
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