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zoom RSS 「アルビノ」少女を巡り描く スケール感抜群のサスペンス

<<   作成日時 : 2018/03/12 20:24   >>

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白い髪、白い肌の人物が白い服をまとい、自らの腕で顔を隠す。強い光から目を守るように――そんな表紙の女性とタイトルに惹かれる。いったい「呪術」とはなにを指すのか。

 主人公は二人の女性。一人は元夫の裏切りに遭い、日本を出てツアーコンダクターとして働く麻衣。IT企業家の浅田の依頼でモロッコの世界遺産アイット・ベン・ハドゥを案内することになり、いきなり観光客を狙ったテロに巻き込まれたが、九死に一生を得る。

 東京オリンピックから数年後というすぐそこにある未来を舞台にしているため、現在に蔓延(はびこ)るテロリストと違う顔ぶれがそこここに存在し、冒頭から世界の不穏さが充満する。

 もう一方の主人公は、タンザニア人の父と日本人の母を持つ十二歳のケイコ。遺伝的要因でメラニン色素を育成する機能が欠ける「アルビノ」であるケイコはある危機にさらされていた。

 それは「アルビノ狩り」――アフリカの一部地域で残る因習。呪術師によって作られる「ポーション」と呼ばれる秘薬は絶大なる力を持つと信じられ、その材料であるアルビノが狩られているのだ。呪術師マギオカのターゲットとなったケイコは、身内の裏切りに遭って家族ごと襲われるが、テロから逃れて移動中の麻衣に偶然救われた。

 恐ろしいことに「アルビノ狩り」は小説内の創作ではなく、実際に行われているという。アルビノの体を加えた「ポーション」が幸福をもたらし、病気を治し、憎い相手を亡き者にする……そうした伝聞にすがる依頼者のために、何の罪もないアルビノたちが脅かされることに恐怖と怒りがこみ上げてくる。

 麻衣、ケイコ、そしてマギオカも裏切られた過去を持っている。自らの過去を抜け出すために行なったことが、三人の運命を揺るがしていく。

 もう一人興味深い人物が登場する。警視庁公安部の園部はひょんなことから麻衣とケイコの警備に奔走する。組織の本流から外れた園部の活躍が事件を解決へと導く過程は痛快だ。三百頁強では収まらない細かなエピソードもあるが、スケール感は抜群。

 ところでネット上では匿名で他人を貶めるような風潮があるが、ある意味これは呪術に近い。誰もが呪術師を気取って呪いの言葉をネットの海に流し続ければ、やがて人々の心に拡散されていく。言霊(ことだま)は案外強い効力を持っている。しかし「人を呪わば穴二つ」。本作は、現代の「呪術」に対する警告にもなっている。

[レビュアー]中江有里(女優・作家)
なかえ・ゆり

新潮社 週刊新潮 2018年3月8日号 掲載

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