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zoom RSS ポストトゥルース時代に犬とともに見る世相

<<   作成日時 : 2018/02/09 19:31   >>

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「All of us, together, as one team, one people, and one American family」

 1月30日、ドナルド・トランプ大統領が一般教書演説(State of the Union Address)を行い、米国の団結を語った。

 その一方で、子供時代に連れられ不法入国した約80万人とも言われる若者「ドリーマー」の、強制送還免除政策「Deferred Action for Childhood Arrival(DACA)」撤廃方針への譲歩は示さなかった。

 DACAについては、1月11日、その変更についての超党派協議の場で、ハイチやアフリカ諸国を「Shithole」(「不潔で不快にさせる所」を意味するスラング)と侮蔑したとの大統領の発言が物議をかもしている。

■ 大統領の人種差別発言

 大統領は発言を否定するが、その場に居合わせたディック・ダービン上院議員は発言があった旨、証言しており、アフリカ連合(AU)、全米黒人地位向上協会(NAACP)など、批判の声が上がった。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)報道官も「発言が事実なら恥ずべきこと。残念ながら人種差別主義者以外の何ものでもない」と語っている。

 フランス北部の港町ル・アーヴル

 ものものしい警備のなか、ガボンから着いた不審なコンテナの捜索が始まる。中から少年が逃げ出し、「保護」しようと追う地元警察。海に隠れた少年を見かけた初老の男マルセルは、海辺にそっと食べ物を置き、立ち去った。

 靴みがきの収入で細々と、しかし、愛する妻との幸せな生活を送るマルセルは、やがて、少年を家にかくまうようになる。

 近所の人々も協力、母親が暮らすロンドンに渡りたいという少年の望みをかなえようと奔走するが、密告する者もいて、警察の執拗な捜索は続く・・・。

 フィンランド人監督アキ・カウリスマキがその独特のユーモアを交え移民問題を描く『ル・アーヴルの靴みがき』(2011)の主人公たちへの視線は温かい。そして、彼らにも幸せを運ぶ筋立ては、現実の厳しさへの痛烈な批判でもある。

 世界的に評価も高く、カンヌ国際映画祭でもプレミアム上映されたこの作品では、さらなる名脇役も目をひく。

 カウリスマキの『過去のない男』(2002)での「演技」でカンヌ国際映画祭「パルム・ドッグ賞(Palm Dog Award)」を獲得した名犬タハティの孫ライカである。

 ライカもパルム・ドッグ賞審査員特別賞を受賞、少年と心を通わせる友となる老夫婦の愛犬を、さりげなく「演じ」ている。

 「If you pick up a starving dog and make him prosperous he will not bite you. This is the principal difference between a dog and man.」とはマーク・トウェインの言葉だ。

 権力者であろうが、不法移民だろうが、人間と違って、然るべき態度で接すれば、犬は裏切ったりしない。

■ 高齢者に安らぎをもたらしてくれる犬

 そして、マルセルのような高齢者にとっては、安らぎを与えてくれる人生の大切な親友ともなる。

 長年公務員生活を送って来たウンベルトは、いまは引退し、僅かな年金を頼りに、愛犬フライクとアパートの小さな一室で暮らしている。

 しかし、部屋代はたまり、年金増額を訴えるデモに参加しても何の解決にもならない。体調不調で入院した時も、何とか入院期間を延ばそうと一芝居うった。その間、食費が浮くのだ。

 ところが、アパートに戻ってみれば、部屋は勝手に改装され、フライクも行方不明。フライクとは「動物愛護局」で何とか再会したものの、金策尽きたウンベルトは自殺を思い立つ。しかし、自分が死んでしまえば、残されたフライクは・・・。

 庶民、弱者視線で名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督が描く『ウンベルトD』は1952年制作のイタリア映画。「戦後」の空気感も残る作品だが、核家族、少子高齢化が進むいまに通じるものは少なくない。

 世に見放され未来を見失った高齢者が、愛犬の未来を案じるところがもの悲しく、「孤独死」を嫌い、高齢者への賃貸住宅の「貸し渋り」が常態化するいまの現実も思い起こさせる。

 世界には野犬が4億頭以上いると言われているが、近くで食糧をあさる彼らを見る目は冷たい。

 野犬には狂犬病という大きな問題がある。撲滅され、そんな問題のない日本であっても、野犬は「動物愛護局」などが「保護」する。

そして、施設のキャパシティの問題もあり、「里親」も見つからず、一定期間が過ぎれば、「処分」などの方策がとられる。「使い捨て」にされる犬側から見た現実も厳しいのだ。

 若手女優ジュリーは運転中白い犬を轢いてしまった。すぐさま動物病院に運び、治療を受けさせるが、貰い手がいるのは子犬だけとの現実を知り、自分の家に連れ帰った。そして、強盗を犬が撃退したことから、飼い始めることにする。

 しかし、犬は突然姿を消してしまう。方々探しながら、訪れた「動物愛護局」では、野犬「処分」現場も目にした。

 犬が血まみれで帰って来た。数日後、犬はジュリーの共演者を襲った。犬は「攻撃犬(Attack Dog)」だったのだ。

■ 黒人を襲うホワイト・ドッグ

 さらなる惨事を招かぬため、安楽死を提案する恋人の言葉を振り切り、ジュリーは犬を「正常に戻そう」と、映画撮影などのための動物訓練施設を訪れた。しかし、黒人スタッフを見た途端、襲いかかってしまう。

 犬が差別主義者により黒人を襲うよう訓練された「ホワイト・ドッグ」であることを見抜いた黒人訓練士キーズは、成功例もなく、自身も何度か失敗した「矯正」に挑むことを決意するが・・・。

 ジャーナリスト経験のあるサミュエル・フラー監督らしい異色作『ホワイト・ドッグ』(1982)は、差別感情も露わな暴挙、暴言が溢れるいま、一見の価値がある一作。

 差別主義者の「ホワイト・ドッグ」飼い主の好々爺然とした様子、「正常に戻そう」と矯正に没頭する黒人の執念、そしてその悲惨な結末から、一朝一夕では「治せない」世に巣食う差別感情の根深さが見て取れる。

 偏狭な人種差別の暴力装置に育て上げられた「ホワイト・ドッグ」と違い、モスクワの野犬ライカは、広く「人類のため」の訓練を受けた。

 そして、1957年11月、スプートニク2号に乗り、地球の周りを回った最初の地上動物となった。

 「考えてみれば、これでも僕は運がいい方だと思う。例えば宇宙を飛んだあのライカ。スプートニクに積まれ、いろいろ調べるため、脳や心臓にワイヤーをつけられ、どんなに嫌だったことだろう」

 「食べ物がなくなるまでの5か月間、地球をまわって、そして、飢え死にした」

 自らの不幸な境遇を、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985)の主人公イングマル少年は、「宇宙犬」ライカの悲劇に重ねる。

病に伏せる母と離れ、田舎の親戚の家で暮らすことになったイングマルは、愛犬シッカンとも離れ離れになってしまう。そして、ある時、シッカンが既に死んでいることを知らされる。イングマルの心の声は訴える。

 「皆、ライカが帰って来れないことは知っていた。死ぬことを知っていて、見殺しにしたんだ」

 実際、ライカが生きて地球に戻れないことは分かっていた。スプートニク2号は再突入に耐え得る装備をもっていなかったのである。

 ソ連当局は、ライカは、しばらく地球軌道をまわり、セットされていた餌で安楽死した、とコメントしてきた。しかし、21世紀に入り、実は数時間以内に絶命していたであろうことを関係者が発表している。

 ライカの「心」は知るべくもないが、人類の(ソ連の)一方的都合の犠牲となった「宇宙旅行のパイオニア」の死から3年余りの時を経て、ユーリイ・ガガーリンが無事地球周回飛行を成し遂げ、人類の宇宙時代が始まった。

■ おとなしい狼を飼いならし都合のいい動物に

 ペット、番犬、狩猟犬、牧羊犬、警察犬、介助犬、そして宇宙犬・・・様々場で、犬は人類の役に立つべく役割を担ってきた。

 その元をたどれば、野生の狼。狼は遊牧生活を送る人間を観察し、その食べあと目当てに近づいてきた。

 やがて、人類は、肉食獣の恐るべき敵だった狼を、自分たちに都合のいい動物にしようと、おとなしい狼を選び、飼育を重ね、人に従順なイエイヌとした。

 それでも、イヌ科イヌ属の狼とイエイヌのDNAは98%以上が一致する。人類は、犬のなかの狼の能力も活用してきた。それには攻撃犬のような例もあるが、人類が活動できなかった極地での生活を可能にもした。

 雪原でも簡単に動きまわれる狼のような能力をもったソリ犬たちが、重く大きなものを遠くへ運ぶことを可能としたおかげで、北極や南極での探検、生活も現実のものとなったのである。

 カリフォルニアの豪邸で生まれ育った飼い犬バックは、使用人の手でブローカーに売られてしまった。

 シアトルへと送られたバックは、郵便をゴールドラッシュに沸くアラスカへと届けるソーントンのそり犬となり、並外れた能力を発揮、ソーントンとも心が通じ合うようになった。

 やがてソーントンは金を発見するが、バックは狼との遭遇で野性に目覚め・・・。

 様々な飼い主のもとを転々、数奇な運命をたどる犬バックを主人公としたジャック・ロンドンの名作小説「野性の叫び(The Call of the Wild)」。

 1972年製作のチャールトン・ヘストン主演の映画版は、多少脚色され、飼い主からの虐待、ライバル犬との抗争といったところは克明に描かれていない。

 しかし、クロンダイク・ゴールドラッシュ(映画のロケ地はアラスカではなくノルウェー)を背景に、欲まみれの人間たちに翻弄され続けながらも、バックが野性に目覚めていくさまは、「文明」というものを深く考えさせる。

 1万年以上にわたり、人類は犬に「労働」の役割を与えてきた。そして、2000年ほど前からは、愛情を注ぐ相手、友ともなった。

■ 人と犬の関係も多種多様に

 人類はサイズも色も形も性格も様々な犬を「創造」し続けた。人と犬との関係も、多種多様なものになった。

 カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞のハンガリー映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』(2014)の主人公、雑種犬のハーゲンも、初めは13歳の少女リリのペットとして幸せな生活を送っていた。

 しかし、リリが疎遠だった父のもとで暮らすことになり、雑種犬に重税がかけられる新たな法律が施行されたことから環境が一変、運命が大きく揺れ動くことになる。

 父のもとで暮らし始めたリリ。しかし、父は税を払うつもりなどなく、ハーゲンを「動物愛護施設」に連れていくように言い放つ。それよりは、と考えたリリは、置き去りにすることを選んだ。

 迷い犬となったハーゲンは、ホームレスに拾われ、闘犬トレーナーの手に渡った。そして、訓練を続けるうち、暴力性に目覚めていく。

 試合は勝利、隙をうかがい逃げ出した。しかし、街をさまよううち、野犬狩りに遭い、「動物愛護施設」に入れられてしまう。

 「処分」の運命となったハーゲンは、憎悪むき出しに、脱走した。後には「愛護施設」の100匹以上の野犬仲間が続いた。統率された軍隊のような一団は、身勝手で強欲な人間たちへの反乱を開始した・・・。

 ファンタジー、スリラー、社会派、愛憎劇、様々な面を持つ異色作が描くのは、移民難民の「通り道」で、「壁」をつくり、「難民キャンプ」のあるハンガリーの揺れ動く現状、差別感情むき出しの内向きな現代社会のメタファー。

 ブダペストの街を疾走する250頭もの犬たち(彼らもカンヌ国際映画祭パルム・ドッグ賞受賞)の姿は、虐げられた者たちが反旗を翻すさまそのものである。

 イヌの目線の高さの映像も多いこの作品は、「人格」ならぬ「犬格」についても考えさせる。自分たちの都合に合わせ「飼育」、都合が悪くなれば「保護」そして「処分」、都合のいい時だけの「仲間」。人類とは随分と身勝手なものである。

 動物を擬人化した作品は、映画や小説、特にアニメに多いが、実際、動物の思考、認知については、それぞれの種に独自の「環世界」があり、人間の基準では正しく評価できないとの概念がある。

■ 一寸の虫にも五分の魂

 人間には認知できないことをできる動物はいくらでもいる。異種のものを比較などできないし、「一寸の虫にも五分の魂」がある。

 動物に例えた侮蔑語を平気で使う者なら、環世界の概念はおろか、一寸の虫の視線で見ることもないだろう。一事が万事、人の考えはその言葉使いの端々にあらわれるものだ。トランプ大統領もよく「dog」を侮蔑の言葉に使うが・・・。(前回コラムで詳述)

 トランプ大統領は一般教書演説で、アフリカ系米国人の失業率が記録的低水準であることをアピールした。

 その点については、遡ること数日、CNNのインタビューで、ラッパーのJay-Zが、「Shithole」発言などについて質問されて批判的意見を述べたことに対し、「私の政策のおかげで黒人失業率は史上最低となったことを、だれかJay-Zに伝えてくれ」とツイート、世を騒がせていた。

 しかし、番組では、黒人失業率低下についても尋ねられており、その答は「Money doesn’t equate to happiness.」(equate toは「同等視する」の意)。

 そして、翌日の別のインタビューでの答えは、カネが物言う世で、人種差別問題に限らず、「上から目線」にさらされる者共通の叫びとも言えるだろう。

 「It’s not about the money.」「It’s about the respect」.

 (本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

 1361.ル・アーヴルの靴みがき Le Havre 2011年フィンランド・フランス・ドイツ映画

 (監督)アキ・カウリスマキ
(出演)アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン

 フランスの港町で靴みがきの微々たる収入でも妻とともに幸せに暮らす初老の男が、街の人々の協力を得ながら、アフリカからの不法移民の少年がロンドンへと向かう手助けをしようと奔走する姿を独特のユーモアを交え温かな目で描く『過去のない男』(2002)などのアキ・カウリスマキ監督作。

 1362.ウンベルトD Umberto D. 1952年イタリア映画

 (監督)ヴィットリオ・デ・シーカ
(出演)カルロ・バティスティ、マリア・ピア・カジリオ

 僅かな額の年金で愛犬とともにアパートの小さな一室で暮らす男が、家賃滞納でアパートを追立てられ、愛犬と街をさまよう様を描く『自転車泥棒』(1949)『昨日・今日・明日』(1963)などのヴィットリオ・デ・シーカ監督の名作の1本。

 1363.ホワイト・ドッグ White dog 1982年米国映画

 (監督)サミュエル・フラー
(出演)クリスティ・マクニコル、ポール・ウィンフィールド、バール・アイブス
(音楽)エンニオ・モリコーネ

 車で轢いてしまった犬が、黒人だけを襲う攻撃犬だったことから、犬を「正常」に戻そうとする若手女優の思いと黒人訓練士の執念を描く『ショック集団』(1963)などのサミュエル・フラー監督による社会派サスペンス。

 (再)612.マイライフ・アズ・ア・ドッグ Mitt liv som hund 1985年スウェーデン映画

 (監督)ラッセ・ハルストレム
(出演)アントン・グランセリウス、マンフレド・セルナル

 1950年代末のスウェーデンの片田舎を舞台に、病に伏した母親から離れ暮らすことになった少年が成長していく姿を描く『サイダーハウス・ルール』(1999)などのラッセ・ハルストレム監督によるゴールデン・グローブ外国語映画賞受賞作。

1364.野性の叫び Jack London’s The Call of the Wild 1972年米国映画

 (監督)ケン・アナキン
(出演)チャールトン・ヘストン、ミシェル・メルシエ
(音楽)カルロ・ルスティケリ

 ゴールドラッシュにわくアラスカを舞台に、カリフォルニアの豪邸育ちの飼い犬が、数奇な運命をたどり、野性に目覚めていくさまを『素晴らしきヒコーキ野郎』(1965)のケン・アナキン監督が描くカルロ・ルスティケリの音楽も印象的なジャック・ロンドンの有名小説の映画化。

 1365.ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ) 2014年ハンガリー・ドイツ・スウェーデン映画

 (監督)コーネル・ムンドルッツォ
(出演)ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール

 雑種犬に重税がかけられた街を舞台に、人間の勝手な都合に翻弄され、かつては少女の愛犬だった犬が、紆余曲折の末、野犬仲間とともに人間たちに反乱を起こすまでを描くハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督が描く右傾化進む世界のメタファー。

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