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zoom RSS オーバーブッキング問題は日本では大丈夫なのか

<<   作成日時 : 2017/04/17 09:11   >>

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・オーバーブッキングは珍しくない

飛行機の座席以上の予約客が来ているので、次の便にしてくれるのであれば補償金を支払うというアナウンスを聞いたことのある人は多いだろう。
出発間際になって座席数以上の乗客が来てしまう状態をオーバーブッキングと呼ぶ。今回、ユナイテッド航空がオーバーブッキングを引き起こし、無理やり乗客を引きずり下ろすという事件を起こし、大きな問題になっている。しかし、多くの人がこうしたアナウンスを聞いたことがあるということは、実は頻繁に発生していることなのである。

・予約客がどの程度くるかを悩んでいるのは航空会社だけではない

予約だけ入れて、搭乗手続きに現れない乗客、いわゆるノーショー(No Show)をする人は少なからず発生する。そのおかげで空席待ちをしていて運よく乗れたという経験を持っている人も多いだろう。一方で、予約が取れていないのに乗ろうと空港にやってくる乗客、ゴーショー(Go Show)の客も少なからず発生する。こうした問題は、航空会社だけではなく、試写会や講演会、あるいは飲食店などでも、どう扱うで頭の痛い問題となる。
できるだけ満席に近づけたいというのは運営側の思いである。そこで予約客や招待客を少し多めにしておく。劇場であれば仮に予想以上の人が来ても、もちろんその程度によるが立ち見席を設けることもできないことではない。しかし、着席することが厳密に定めらえている航空機ではそう簡単ではない。かつては混乱を避けるために、自社社員をコックピットの空き席や客室乗務員用のジャンプシートの空き席に座らせるといった手法も採られたが、テロ対策などが厳しくなり、最近では行う航空会社はほとんどない。

・コンピューターの管理システム導入で正確さが増したというが

営業サイドの考え方として、仮に300人乗りの航空機で300人の予約を取るのではなく、一定のノーショーが発生することを見越して、少し多めに予約を取っておく。これがオーバーブッキングである。どれぐらいの数を余計に取るかは、それぞれの航空会社の判断であり、予約の内容や時期などを総合的に判断する。ところが、この読みを誤ると、予約を持った乗客があふれてしまうのである。
こうしたことを防ぐために、国際線では10年ほど前まではリコンファームという制度があった。飛行機の出発72時間前に確実に乗るという意志を表示する「予約の再確認」のことである。もし、航空会社へリコンファームの連絡を忘れれば、予約を解約された。しかし、コンピューターでの管理システムの導入などで搭乗客数の管理が正確にできるようになったという理由で、現在はごくわずかの航空会社を残して、廃止された。
正確に予測できるようになったと言っても、最後は人間の行動である。見込みが外れるということも、皆無ではない。かくして、オーバーブッキングが発生する。

・なぜここまで大事になったのか

それにしても、今回の問題で、よく判らないのが、自社の乗務員を搭乗させなくてはいけなくなり、急きょ、席が足りなくなったというユナイテッド航空側の当初の説明である。乗務員を運航上の都合で自社便に便乗させることを、デッドヘッド(Dead Head)と言い、これもまた珍しいことではない。しかし、計画的に行われることが通常なので、事故や急病などの発生による緊急事態を除けば、直前にというのはありえない。さらに、結局、この人数を間違えていたという説明もあり、ますます不可解な状況になっている。
なにより、問題を拡大させてしまったのは、降機させる乗客を一方的に指名をし、拒否しているにも関わらず、警察官を使って、暴力的に引きずり降ろすという「暴挙」である。
他にも不思議な点がある。乗客から預かった荷物である。搭乗カウンターで預かった乗客の荷物は、ベルトコンベヤーで運ばれ、コンテナに入れらて機体下部に収納される。仮に搭乗した乗客を降ろすのであれば、その荷物も降ろさなくてはいけない。これはテロ犯が、爆発物を入れた手荷物を預け、そのまま搭乗せずに上空で爆破させる可能性から、非常に厳しく定められている。つまり、機内に乗り込んだ乗客を降ろそうと思えば、荷物室を再度開け、その中のコンテナから該当する荷物を降ろすという時間のかかる作業をしなくてはならない。
・航空業界の質の低下

このように考えていくと、単なるオーバーブッキングではなく、他の問題が複合して発生したと考えざるを得ない。どうも、空港スタッフ、乗務員、パイロット、運行管理スタッフ、さらには警察官それぞれの連絡や意思疎通のミスがことを大きくしてしまっているようだ。
さらにアメリカの航空業界の質の低下には、いくつかの原因が考えられる。

第一にアメリカの航空行政の失敗による大手寡占状態から生じているサービスレベルの低下である。1978年以降、アメリカでは航空業界の規制緩和、参入自由化が進められた。その結果、多くの中小航空会社が設立、参入し、低価格競争が激化した。しかし、結果的には激しい低価格競争の中で資本力の乏しい中小航空会社は相次いで撤退や倒産し、大手の寡占化が進んだ。現在、アメリカ国内線では上位4社で7割近いシェアを持っている。こうした安定した状況は、競争関係を失わさせ、サービスレベルの低下に繋がっていると指摘されることが多い。

第二に航空業界の人材不足である。航空業界は一見、華やかに見えるが、もはや他業界と比較して雇用条件が優れているとは言いがたい。特にアメリカ国内の給与レベルなど雇用条件は、他業種に比較しても必ずしも良くはない。また、空港スタッフは多くの場合、航空会社の社員ではなく、子会社や派遣会社の社員であり、待遇はさらに悪くなる。この結果、慢性的な人材不足と接客レベルの低下に陥りがちである。さらに、このことは空港スタッフだけではなく、パイロットや客室乗務員なども同様である。アメリカの航空会社の乗務員の給与は、すでに世界的に見て安価になっており、航空需要が急増しているアジア諸国や中近東諸国の航空会社がより高い給与を提示するために、パイロットが引き抜かれ、慢性的な人材不足に直面している。
最後に311以降の世界的なテロの急増により、空港警備が厳しくなっていることと、アジア系の人種に対する警戒感が高まっている点もある。空港や機内では、小さなトラブルでも過度の反応が起こり、今回のような過剰な対応が引き起こされる可能性が高まっている。

・日本の国内線では大丈夫か

日本国内でも、国土交通省の発表によれば2015年度に計1万1550席のオーバーブッキングが発生している。そのすべては航空会社が問題なく処理しているということになっている。
しかし、日本の航空会社や空港でも、アメリカと同様の問題が起きている。今回のユナイテッド航空のようにいくつも最悪の偶然が重なりあうことは少ないにしても、航空業界での人材不足とサービスレベルの低下が深刻化すれば、従来のようなサービスレベルを維持できなくなる可能性も否定できない。すでに日系航空会社でも昨年、定員オーバーのまま離陸しようとした事案が国際線、国内線ともで発生するなど細かな事故が起きている。こうしたことが大事に至らないようにと祈るばかりである。
航空運賃が安くなり、多くの人が利用できるようになった。かつてのように「空飛ぶ豪華客船」の時代から大きく変化し、「空飛ぶ乗り合いバス」の時代になった。こうした変化の中で、航空会社や空港会社は、「安全」と「安心」をどう提供していくのか。そして、乗客は「価格」と「サービスレベル」をどう評価していくのか。さらに言えば、そこで働く人たちの「労働環境」と「接客レベルの質」をどう改善していくのか。こうした背後にある問題を解決していかねば、今回の事件は、決してアメリカで起こった対岸の火事では済まないだろう。
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中村智彦
神戸国際大学経済学部教授
1964年生まれ。上智大学を卒業後、タイ国際航空株式会社、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、現在、神戸国際大学経済学部教授。愛知県愛知ブランド審査委員、山形県川西町総合計画アドバイザー、東京都北区産業活性化ビジョン検討委員会副委員長など自治体や団体の役職を務める。会社員時代に営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に政策立案のための経済調査を担当。そうした知識を基に企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担っている。
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