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zoom RSS “5G時代”にドコモが果たす役割とは――吉澤和弘社長に聞く

<<   作成日時 : 2017/03/02 20:39   >>

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 2月27日から、スペイン・バルセロナにて「Mobile World Congress 2017」が開催された。周知の通り、MWCは通信キャリアと通信関連ベンダー、端末メーカーなどが集まる世界最大のコンベンションであり、あわせてGSMA(GSM Association)を主体に通信関連技術の標準化会議などが行われる。モバイルIT分野において“未来を決める場”といっても過言ではない。

【“AIタクシー”のデモ】

 このMWCに日本のオペレーターとして唯一、毎年出展しているのがNTTドコモである。同社はMWCにおいて日本のモバイルIT技術の情報発信を積極的に行い、通信業界における日本の存在感を高めることに貢献している。

 そして今回、MWC 2017の会場において、NTTドコモの吉澤和弘社長に単独インタビューを行う機会を得た。5Gを中心に業界全体のパラダイムシフトが近づく中で、ドコモはどのような考えを持ち、どのような姿勢で臨むのか。ドコモブースのレポートとあわせてお伝えしたい。

●MWC 2017で具体性を増す5G

――(聞き手:神尾寿) 今回のMWCに合わせて、ドコモはじめ22社が5G標準仕様の早期策定に関する共同提案に合意がありました。「早ければ2019年の大規模トライアルの実施または商用展開」という形で当初計画の前倒しが示唆されていますが、日本での5G商用化も早くなる可能性があるのでしょうか。

吉澤氏 基本的に2020年の(商用化)実現目標は変えていません。しかし(5Gの)標準化を前倒しにできれば、本格的な商用サービスの準備がしやすくなり、導入がスムーズになります。これはオペレーター(通信キャリア)にとって有益です。

―― なるほど。大規模トライアルの実施が可能になったり、サービス開始当初のエリアをある程度広く取れるなど、標準化が1年前倒しになれば「キャリアとして事業上の選択肢が増える」メリットがありますね。

 ドコモはXi(4G)の導入時には「グローバル市場のトップグループでサービスを開始したい」というコメントをしていました。この方針は5Gでも同様でしょうか。

吉澤氏 現在、ドコモはトップグループでも先頭の方にいます。サービス開始時もトップグループのトップは狙いたいですね(笑)。そう考えましても、5Gの標準化が前倒しになるのは望ましい。ベンダーが慌ててチップを用意してなくてすみますから。

―― 今回のMWCで、QualcommやEricsson、Huaweiなど、インフラベンダーの取材もしてきましたが、5Gの商用化に関しては3Gや4Gの時よりも順調に準備が進んでいる印象を受けました。また開発中の技術群を見ますと、4Gから5Gへの移行はこれまでよりもスムーズに行われそうです。

吉澤氏 おっしゃる通りですね。一昨年(2015年)あたりから5Gというキーワードは出ていましたが、去年(2016年)は言葉先行で実態がよく分からないという状況でした。しかし今回はかなり実現に向けた技術やユースケースがはっきりと出てきていますので、着実に先が見えてきました。そこにかかわるベンダーやオペレーターもはっきり5Gを言うようになりましたね。

―― 確かにユースケースの提案が多いというのは、今年(2017年)のMWCの特徴です。

;吉澤氏 Nokiaの展示で自動車の遠隔運転を5GとLTEで比較したものがありましたが、やはり5Gの方は遅延がなくハンドリングがしっかりとできていました。むろん、そういったユースケースを(5Gになって)実現するにはさまざまな課題がありますが、インフラの進化がどのようなアプリケーションにつなげるか、という視点が持てる段階まで来ました。

―― 5G関連の技術に目を広げますと、今回のMWCではクルマのDSRCに替わる「C-V2X(Cellular Vehicle to Everything:自動車とさまざまなものをつなぐ無線通信の技術)」や、公衆無線LANシステムの代替になりそうな「LAA(Licensed Assisted Access using LTE:免許不要の周波数帯)」などの展示・提案が増加しており、さまざまな無線通信システムがLTEベースに収束されていく傾向があるように感じました。

吉澤氏 それはあると思います。われわれ自身もLTEのシナリオは「2018年に1Gbpsを目指す」などまだあるわけです。その向こうに5Gを見据えてはいますが、スペクトラムがどうなるかまだ分かっていないところもあります。

―― 今後はIoT絡みの接続が増えていきますからね。NB-IoTなどナローバンドの技術提案があるとしても、これまでハンドセット向けが主体だったスペクトラム(周波数)の運用や、ビジネスモデルも違ったものを考えなければいけません。

吉澤氏 その通りです。無線システムのLTEベースへの収束や本格的なIoT時代の到来では、市場カテゴリーごとに通信に求められる要素が多様化します。それを処理するクラウドやデバイスでどこまでやっていくのかなども含めて、業界全体で考慮し出した感じがします。

―― ドコモブースの5G展示でも、産業用ロボットをモチーフにユースケースを提案されていますね。

吉澤氏 低遅延の産業用ロボットは、高画質のカメラ映像を転送し、低遅延でないと穴は掘れないわけです。それ以外にも警備会社と連携しながら、機械警備のもっとすごいことができないか? とか、AR・VRといったエンターテインメント分野もあります。

―― 5Gのサービス開始に向けて、重要なマイルストーンや実現に向けての課題はありますか?

吉澤氏 基本的には標準化のスケジュールですね。先ほど前倒しの話がありましたが、(5Gの)標準化が全ての前提になりますから。またチップのできるスケジュールも、1年短くなることでマージンが厳しくなります。ただ、Qualcommなどに「1年前倒しでもやる」と言ってもらっているからこそ、計画が前倒しになったという経緯があります。

―― 3Gや4Gの導入時と少し状況が異なると感じるのは、今回かなり海外オペレーターが熱心なことです。過去には市場規模が大きい米国のオペレーターがインフラの世代交代にやや消極的だったことなどありましたが、5Gに関しては米国市場はかなり前向きですね。これならば「ベンダーさんも頑張りやすいのでは」と思いました。

吉澤氏 グローバルでみれば(5Gへの移行に関して)オペレーターの温度差もなくはないですが、5G標準化に対して歩調を合わせようとはなっています。ただし、まだ欧州の一部ではLTEへの投資にかなり資金を投じていますので、5Gへの移行で「さらにどれだけ費用がかかるのか。回収はどうなるのか」と心配されているオペレーターがいるのは事実です。

―― 確かにMWCは毎年バルセロナで開催されていますが、4Gが街中から会場まできちんとつながるようになったのは今年が初めてですからね (苦笑)

●5G時代に向けて布石を打つ「+d」

―― ドコモは毎年MWCに出展している日本で唯一のオペレーターですが、今年は5G関連以外では、IoTをベースにしたB2Bのソリューション展示が多いですね。コンシューマー向けのサービスやプロダクトの展示が一切ありません。

吉澤氏 それはかなり意識してやっています。なぜなら、それらは現在の4Gで実現しているものではありますが、5G時代になればサービスやソリューションがさらな進化するからです。例えばドローンや農業センサーの画像処理などは、5Gで画像をすぐ送って、その場でリアルタイム診断ができるようになると思います。

―― 今回MWCの会場をまわって印象的だったのは、ドコモだけでなく、海外オペレーターもB2B重視という姿勢だったことです。吉澤社長になってから「+d」でドコモがやってきたものと同じベクトルのものを、海外オペレーターも指向しています。さまざまな産業やビジネスを、オペレーターがIoTとソリューションで「価値の上乗せ」をしていくというものです。

吉澤氏 私もAT&Tなどいくつかのオペレーターと話をしましたが、彼らの言い方も「自分たちで全部できるわけではない」ということです。オペレーターと、サービスやテクノロジーを提供するパートナーを組み合わせることによって、ソリューションができる。それがコネクテッド・カーであり、スマートシティーであると。ご指摘の通り、(ドコモと)考え方がかなり似てきています。

 今後のオペレーターはネットワークの提供だけではやっていけなくなります。さまざまなビジネスパートナーとともに、新しい価値を提供していかなければなりません。

―― IoTのソリューションでは、ドコモは自動車や農業など多くの提案をしていますが、今後グローバルでビジネスプラットフォームを作る計画はありますか。

吉澤氏 そうですね。全ての分野はできませんが、アライアンスを組みながら、そこにプラットフォームを作る役割を担っていきたいと考えています。そこでは海外展開も視野に入っています。

―― 今回のMWC全体をご覧になって、5Gという「新しい器」に入ってくる新事業で吉澤社長が特に注目する分野はありますか?

吉澤氏 コネクテッドカーをはじめ自動車関係には注目しています。MWC会場でもクルマの展示がたくさんありましたし、「(世界的に)ものすごく力が入っているな」と感じました。あと今回のMWCでは下火になってしまいましたが、ヘルスケアとウェアラブルは本来はもっと注目されてよいと思っています。

―― 自動車は今回、C-V2Xをさまざまな企業が提案していました。ドコモも昨年5GAA (5G Automotive Association)に加入しましたが、この分野について今後どういうスタンスで臨んでいくのか教えてください。

吉澤氏 むろんドコモとして積極的に行っていきますが、この分野はNTTグループとして取り組む必要があります。グローバルでの5GAAの標準化にしっかり入っていって、パートナーも増やしていきたいですね。

●ドコモブースは「+d」のソリューションと「5G」が主役

 吉澤社長のインタビューでも触れた通り、NTTドコモのブース展示は自動運転バス、AIタクシー、ドローンなど、国内で進めているソリューションと5Gの展示が主役だ。ブースの規模自体はそれほど大きくはないものの、その内容は濃く、5Gに向けた業界トレンドをしっかりと押さえたものになっている。

海外通信事業者へのコンサルティング領域

 日本は山間部や島々が多いため、アンテナ角度のチューニング方法など、独特なノウハウを現場レベルで持っている。そこでドコモは課題を抱える海外の通信事業者に対し、ネットワークに関するコンサルティングを行っている。

 特に地震など大規模災害の経験値は大きく、「海外の事業者からは、地震対策や震災後の復旧について問い合わせをいただいている」(担当者)そうだ。

九州大学自動運転バスの実証実験

 ドコモは九州大学、DeNA、福岡市の4者とコンソーシアムを設立し、2017年1月から九州大学伊都キャンパスで自動運転バスの実証実験を始めた。無人の電気自動バス車両を用い、広大なキャンパス内を走行する。

 実証実験では、歩行者側の端末にバスの接近を知らせることにより、より安全な運行を実現する「P2X」という新概念を提唱。また先読みオンデマンドによる新たな運行管制システムを採用し、運行管制センターが効率的なバスの配車を指示する。ブースを見た海外の参加者の反応は「自動運転とP2X、運行管制のどれも同じくらい興味を持っていただいている」(担当者)という。

需要予測を行う「AIタクシー」

 AIを活用し、30分先の需要予測を500メートル範囲で行う実証実験が「AIタクシー」だ。需要の大きいエリアを可視化することで、タクシーの効率的な運用と乗客の利便性向上を目指す。

 デモ展示では、実際に東京で実験中のデータがタブレット端末に表示され、リアルタイムで予測値が変化した。海外の参加者からも「面白がって見てくれる」(担当者)という。まずは日本国内で2017年内の商用化を目指す。

セルラードローンを活用した買い物代行サービス

 ドコモの携帯電話ネットワークを利用するセルラードローンを活用し、離島に商品を届ける買い物代行サービスの実証実験も展示された。航行距離が長く、遠隔コントロールも可能なLTEネットワークの特徴を生かし、福岡市能古島と九州本島間の約2.5kmを移動する。

 現在実験は一時中断し、検証の段階に入っている。「ドコモは買い物代行以外にも、防災や被災地支援などで利用できるドローンの飛行実験をしているため、それぞれの検証結果を合わせてやっていく」(担当者)という。

稲作管理システムによるスマート農業

 ドコモは農業のICT化を推進しており、その施策の1つがドコモのネットワークを活用した水田センサーと、稲作管理システムによるスマート農業だ。水田に一定間隔にセンサーを立て、水位などを定期的に計測。クラウドにデータを送ることで、タブレット端末やスマートフォンでアプリを介し、現場を見に行かずとも水田の状況が分かるようになっている。

 センサーには1本ずつにSIMが入っているが、2017年度からメインとなるセンサーのみにSIMを入れ、データをひとまとめに集めてクラウドにアップロードするよう進化するという。ランニングコストの削減が狙いだ。

 現在は大規模農家や自治体の試験的導入が多く、国内での普及には時間がかかると思われるが、今回の海外展示では「意外と立ち寄ってもらっている」と担当者は胸をなでおろす。東南アジアの参加者や、スペインで日本米を育てる参加者が興味を持っていたという。

5GとVRを活用し遠隔でロボットを操作

 5GはLTEに比べ低遅延になるため、VRの映像もほぼタイムラグなく見られるようになる。そこで産業用ロボットアームとVR端末を組み合わせ、遠隔で作業ができるシステムが開発されている。

 デモでは実際に5Gの基地局をブース内に作り、VRゴーグルに映像を投射。隣に設置されたロボットアームとボールの動きを、360度の工場内の3DCG映像で、遅延なくスムーズに見られた。「将来的には人が立ち入りにくい災害現場での遠隔操作や、離れた場所にいる患者の遠隔手術など、さまざまな分野へ応用していきたい」(担当者)という。

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