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zoom RSS 「主役は極右」だったオランダ総選挙:欧州の試練は続く

<<   作成日時 : 2017/03/17 18:57   >>

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 欧州の小国オランダの選挙が、これほど国際的注目を集めたのは初めてだ。米国発の「トランプ旋風」は欧州でも吹き荒れるのか。その試金石となった。ヘルト・ウィルダース党首が率いる極右「自由党(PVV)」は第2党にとどまったが、終始選挙戦の主役だった。はっきりしたのは、「ポピュリズム(大衆迎合主義)か否か」が政治の新機軸となったことだ。左右両翼が政権を争った欧州政治は崩壊に向かっている。


■ポピュリズムは止めたが……

 マルク・ルッテ首相は「オランダが“誤ったポピュリズム”を止めた」と大喜びだった。自身が率いる中道右派の自由民主党(VVD)が首位となり、「英国の欧州連合(EU)離脱、トランプ米政権の誕生」という悪い流れを断ち切ったというのだ。とはいえVVDは議席を41から33に大きく減らし、信任を得たとは言い難い。ルッテ首相には、ポピュリズムのドミノを止めるのが唯一の目標になっていたのだ。
 オランダ政治は戦後、VVDとキリスト教民主勢力、中道左派・労働党の3大政党が「親EU・民主主義」の枠を作ってきた。1998年の総選挙では、定数150のうち3大政党の合計は112議席にのぼった。それが徐々に減り、今回は計61。過半数にも届かない。特に労働党は退潮が著しい。2012年総選挙で獲得した38議席は9議席に減り、少数政党に転落した。極右勝利を回避したとはいえ、米英両国と同様、エスタブリッシュメント(支配階層)への反乱が起きているのは明らかだ。
 アムステルダム大のハイス・シューマッハー准教授は「今回はPVVか、反PVVかを問う選挙だった」とした上で、「連立交渉はPVV抜きで進むが、小党連立の不安定政権になるだろう。各党はアンチPVVだけが共通点だった」と指摘する。ルッテ首相の続投には、少なくとも4党の連立が必要だ。


■「緊縮」への抗議表明

 ウィルダース氏は選挙を自分自身に対する国民投票に変えてしまった。彼は何者か。
 オールバックの髪をブロンドに染めているものの、母は旧植民地のインドネシア系で、生粋の白人ではない。イスラム嫌悪発言はトランプ氏以上に直情的で、「コーランはテロの源泉。禁書にする」「国境を閉めろ! イスラム過激派が来るぞ」と公言する。国際テロ組織アル・カーイダがインターネット上に出した標的リストに名前があがり、「生命の危険がある」として選挙戦では24時間警備がついた。
 党の公約は、A4判の紙1枚に書かれた11項目だけ。「オランダの脱イスラム化を進める」「EU離脱を問う国民投票を行う」以外、これといった政策もない。財源を示さないまま「年金支給年齢を65歳に戻す」「所得減税」を掲げ、左派票獲得を狙った。
 世界の注目は、「EUの優等生オランダで、なぜ極右なのか」に集中した。経済成長は毎年2%前後と堅調で、失業率は5%。緑と運河で覆われた国土はどこもインフラが整備され、トランプ政権を生んだ米中西部の「ラストベルト」とは大違い。欧州福祉大国の代表で、グローバル化の恩恵を受けてきた貿易国家でもある。
 オランダ人ジャーナリストはそんな優等生国家に「裏側」があるとし、昨年大ヒットしたテレビのドキュメンタリー番組を勧めてくれた。アムステルダム郊外での貧困層の暮らしを追った「罪」という題名の作品。「平等の社会」と自負する国の底辺で、格差が広がる実態を浮き彫りにした。番組で紹介された借金苦の男性には、「助けてあげて」と寄付金が4万ユーロも集まった。
 番組制作者のエステル・グールド氏に電話すると、「ウィルダースへの投票は、緊縮を進めた政府への抗議表明ですよ。特に労働党に対しては、貧困層の間で『裏切られた』という思いが強い。自分の声が政治に届いていない、という不満が強い」と話した。
 格差はユーロ危機後にひどくなったという。政府が補助金を削減したためだ。政府が省力化に努めた反動で、手当申請はすべてコンピュータ化され、高齢者や貧困層には手に負えないほど複雑化した。


■「イスラム嫌悪」の原因

 今世紀に入ってから、オランダでは「イスラム嫌悪」につながる2つの衝撃的事件があった。
 2002年の選挙直前、コラムニストのピム・フォルタウィン氏が暗殺された。「イスラム移民流入を止める」と公約して新党を結成した人物で、同性愛者であることを公言していた。銃撃犯は白人青年だったが、彼の死は「政治的殉死」と見なされた。第2の事件は2004年に起きた。大画家の弟の子孫で映画監督のテオドール・ファン・ゴッホ氏がモロッコ系青年に銃撃された上、のどを切り裂かれ、惨殺された。イスラム社会の女性に対する暴力を告発する短編映画を作った直後だ。表現の自由や男女平等を尊ぶオランダの価値観を「イスラム教徒が脅かす」という恐れが、殺人事件により現実のものとなった。
 オランダのイスラム教徒は現在、約85万人。人口の約5%を占める。多くは1960〜70年代、政府が労働力として招いたモロッコやトルコからの移民とその子孫だ。
 オランダは多文化主義を誇り、学校でのイスラム教教育も容認してきた。「他人に迷惑をかけない限り、自由を尊重する」が国是で、安楽死や同性結婚、売春を法で認める国である。だからこそ、立場が違うという理由で殺人を犯す人や集団は、「国を揺るがす存在」と映る。
 ポピュリズムを止めたルッテ首相も、選挙戦中の新聞広告で「この国のルールに従わない者は出ていけ」と主張し、イスラム移民の犯罪に厳しい姿勢をとった。


■「ルペン大統領」誕生の可能性

 オランダ総選挙でウィルダース氏の勢いを止めたとはいえ、求心力低下に悩むEUにとってはほんの息継ぎでしかない。今年は4〜5月にフランスで大統領選があり、9月にはドイツ総選挙が控える。イタリアも年内の総選挙実施が濃厚だ。
 中でもフランスでは、極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首の当選が現実味を帯びてきた。大統領選の争点はオランダ以上に、「極右か否か」に集中する。
 しかも、ここで止め役が期待されるのは、39歳のエマニュエル・マクロン前経済相だ。オランド大統領ら仏社会のエリートを輩出した名門「国立行政学院」出身で、選挙は今回が初めて。社会党の予備選にさえ出たことがない。公約といえば、どう見てもオランド政権の焼き直し。このシロウト政治家に、EUの中核を担うフランスの未来を託さざるを得ないのである。
 そうなったのも、フランスはオランダ以上に左右両翼の崩壊が著しいためだ。
 ドゴールの流れを汲む中道右派・共和党候補のフランソワ・フィヨン元首相は、妻と娘、息子の家族3人を自分の秘書にして、給与として約1億円も支払った。今や公金横領の容疑で、捜査を受ける身だ。社会党候補は、党内左派のブノワ・アモン前教育相。予備選を勝ち抜いたものの、「国民全員に月750ユーロ(約9万円)の最低所得を保証」「雇用を奪うロボット生産に対する課税」という浮世離れした公約で支持が伸びない。それどころか、オランド政権を支えた党内中道派が相次いで不支持を表明し、党は分裂寸前だ。
 フランスは2回投票制で、第1回投票の上位2人が決選投票に進む。目下の世論調査では、左右2大政党の公認候補が上位2人に残れず、ルペン対マクロンの一騎打ちになりそう。マクロン氏に「極右阻止」の期待がかかるのは、このためだ。これまでは極右アレルギーがあるため、「ルペン氏は決選投票で敗退する」と見られてきたが、そんな仏政治の常識は今回に限って通用しそうにない。


■なぜ福祉大国で? 

 それにしても、欧州で「反イスラム」を声高に掲げるポピュリズム政党が台頭するのは、オランダやフランス、ドイツのほか、デンマークやフィンランド、スウェーデンなど日本がお手本としてきた福祉大国ばかり。同じポピュリズム政党でも、イタリアの「五つ星運動」やスペインの「ポデモス」は緊縮反対を掲げながら、イスラム移民排斥やEU離脱にはあまり熱心ではない。中東からの難民流入の最前線なのに、である。
 アムステルダム大のシューマッハー准教授は「豊かな人ほど、変化を恐れる。自国の福祉や文化に満足しているからこそ、人権や個人の自由を尊ぶ欧州の価値観がイスラム台頭で脅かされている、という不安が強いのだろう」と指摘する。
 オランダ総選挙は、ポピュリズム政党の勢いが、主要政党が総力を挙げて対抗しなければ止められないほど強いことを示した。既成政党は生き残りのため、ポピュリストに負けないほど強く「国益優先」を打ち出し、厳しい移民政策をとるようになるだろう。欧州政治や外交は当面、ポピュリズムという大きな流れの中で動くしかない。

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