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zoom RSS 反対運動の日当は、なぜ「2万円」だったのか

<<   作成日時 : 2017/01/17 13:49   >>

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少し前、TOKYO MXの『ニュース女子』という番組が沖縄・高江のヘリパッド移設問題を取り上げ、「反対派は弁当付きで、日当が支払われている」と報じたことが「デマ」ではないかと大きな話題になった。

【「日当2万円」は本当か!?】

 番組が「日当」の根拠としたのは、NPO法人が高江の情報をSNSで発信する「特派員」を募集したビラと、誰が使用したか分からぬ茶封筒のみだったことを受け、反対派のみなさんが「運動を排除するための悪質なデマ」だと怒りの声をあげたのだ。一方、ネットでは「図星だから怒っているのでは」といまだ番組を擁護(ようご)する声もあり、今も一部の方たちの間で激しい論争が続いている。

 この手の話は数年前からネット上ではまことしやかに囁(ささや)かれている。いい機会なのでどこかのメディアが徹底的に調べあげて、白黒つけていただきたいと心から願う一方で、個人的にはそれとは別に気になっていることがある。

 それは反対派の方たちに支払われているという日当が「2万円」とされている点だ。建設現場で未経験者が日雇いで働いても日当1万円がいいとこだ。なぜ座り込みや集会参加だけで2万円という高額な報酬がもらえるのか、ということがどうにも引っかかってしまう。

 そんなちっちぇえ話はどうでもいいだろ、なんて声が聞こえてきそうだが、もし今回の話が反対派のみなさんが主張をするような「デマ」だとするのなら、「2万円」はその「犯人」を突き止めるうえで重要なポイントになるのだ。

 火のないところに煙はたたぬと言うくらい、デマを流す者は、受け取った人たちが「この話はホントっぽいな」と思うような説得力をもたせるため、なにかしらの「事実」をベースにしてデマをつくりだす。今回もデマだというのなら、「2万円」は犯人像を読み解く重要な痕跡なのだ。

●どんな人物像が見えてくるのか

 では、どんな人物像が見えてくるのか。まず、「市民運動とかけ離れた金銭感覚」の持ち主であることは間違いないだろう。実はこれまでもいわゆる「反対運動」において「日当」が指摘されることはちょこちょこあった。しかし、そこで取りざたされるのは、せいぜい数千円程度だからだ。

 例えば、1996年に沖縄米軍が山梨県富士吉田市の北富士演習場に実弾演習を移転するという話がもちあがって、反対運動が起きた。それを主催していた富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合が臨時議会を開いて、「入会権擁護費」として約1650万円を予算化、そこから「住民総決起大会」の参加者に4000円ほどの日当を払っていた。組合幹部はその金額の根拠をこのように言っている。

 『参加料三千円で食事代千円。参加してくれた人への実費弁償だ』(朝日新聞 1996年6月18日)

 もちろん、現在のムードからも分かるように、この「日当付き反対運動」はいわゆる「市民」のみなさんから批判の嵐にさらされ、有識者から、『お金を配って人を集め、政治的な主張をするような集会を「市民運動」とみるのは間違い』(同紙)なんて声もあがった。

 ただ、それはあくまで建前的な話であって、現実には「実費弁償」は反対運動への動員を呼びかける労働組合ではちょこちょこ用いられる。つい最近も小坪慎也・行橋市議会議員が自身のブログにアップした、ある市職員組合の「戦争法案」反対集会への動員ビラが注目を集めた。

 そこには、「憲法を守ろう!今後の行動予定 組合員のみなさんも、ぜひご参加を!」という参加への呼びかけとともに、「上記行動に参加いただいた組合員に、交通費込2,000円(家族1,000円)をお支払いします」という「約束」が明記されている。

 ちなみに、「実費弁償」は高江とて例外ではない。反対派のみなさんを応援してきた『沖縄タイムス』にも「市民団体では少数の固定メンバーが実費の一部を受け取っている」(2017年1月16日)とある。

 こういう市民運動の現実を踏まえれば、もし「反対派は日当をもらっている」という噂を喧伝(けんでん)しようとするのなら3000円や5000円といった金額設定にするのが「得策」であることは言うまでもないだろう。「実費」として一部の方はもらっているわけなので、反対派も全面否定が難しい。過去にも同様のケースが明らかになっているので、一般の人にとっても信憑性(しんぴょうせい)が高い話である。

 しかし、現実はそうなっていない。建築現場で未経験者が働いても日当1万円程度という相場と照らし合わせても、かなり高額な「2万円」という数字がでてきたのだ。

●なにかしらの政治的意図を感じる

 沖縄タイムス辺野古・高江取材班のSNSによると、16日には工事用ゲートに約30人、14日にはキャンプ・シュワブ第3ゲートに約50人が集まったという。「日当2万円」が事実なら、この2日だけで160万円が吹っ飛んだことになる。反対運動はもう2年以上に続いている。莫大な人件費をいったい誰が払っているのか。中国や北朝鮮がスポンサーだというが、そんな巨額海外送金を見抜けないほど日本の捜査機関の目は節穴なのか。

 では、実際に社会にでて働いて賃金を得たことのある人間ならば「うさん臭いな」と感じるような無理筋の話が、なぜネットではあたかも「事実」のように飛び交っているのか。ネット上の「日当2万円」説をたどっていくと、ある「取材記事」にたどりつく。

 2013年11月、『夕刊フジ』の「暗躍列島を暴く」という連載記事の中で、ジャーナリストの大高未貴氏が沖縄で現地を取材され、こんな「証言」を得たとして紹介されているのだ。

 『那覇在住で定職を持たず、自由な生活をしているA氏は「基地反対集会や座り込み運動のバイトはいい金になる。日当2万円プラス弁当がつく日もある。掛け持ちで2つの集会に出なければならない時は、別の人間にいかせて1万円をピンハネするから、私の日当は3万円になるときもある」と明かした』(夕刊フジ 2013年11月22日)

 ほら見ろ、やっぱり事実じゃないかという声が聞こえてきそうだ。確かに、「ジャーナリスト」を名乗る立派な方が、証言を捏造(ねつぞう)などするわけがない。『ニュース女子』は一刻も早く大高氏の協力を仰いで、「A氏」を探し出してインタビューすべきだ、とも思う。

 ただ、その一方でこの「A氏」がなにかしらの「政治的意図」をもって大高氏に接触したのではないか、と見えてしまう。理由は「タイミング」である。彼が「日当2万円」という「秘密のバイト」のうまみを得意げに語るおよそ半年前、基地反対運動に対抗する「秘密のバイト」が問題になっているのだ。

 『米軍制限水域の漁業補償に反対する人を「有力者」が説得した場合、「有力者」に土産品や報労金を公金で支払えるとの規定を防衛省が設けていたことが明らかになった。米軍基地駐留に異議を唱える住民を懐柔し、協力者にするため札束をちらつかせる行為にしか見えない』(琉球新報 2013年7月6日)

 この時点でこのカネはまだ払われていないということだったが、当時は「日当」にも注目が集まった。「県内各漁協が米軍の提供水域などの運用による漁業権制限を承認した総会や、米軍普天間飛行場の辺野古移設を容認した名護漁協の総会に支払われてきた」(琉球新報 2013年6月29日)という「日当」である。もちろん、漁業補償とは別のカネだ。

●救いの神のように「A氏」が現れた!?

 さらに気になるのは、「A氏」が大高氏の取材に応じてからほどなくして2014年8月、辺野古の新基地建設着工の際、実際に「2万円」などの日当をもらう住民が現れたことだ。

 『辺野古沖には海上保安庁や警備会社の船のほかに、警備会社がチャーターした警戒船が出ている。業務は原則、午前8時〜午後5時。船長には日当5万円、同乗する警戒員には2万円が支給されている』(沖縄タイムス 2016年7月2日)

 辺野古沖というと、カヌーに乗った反対派のみなさんと、海上保安庁の巡視船が火花を散らしているイメージを抱く方も多いだろうが、実はそこには「警戒船業務」を「日当」で請負う地元の漁業関係者もいるのだ。『沖縄タイムス』によると、1人で月に15回警戒船業務に出た船長もいるという。つまり、月75万円の収入だ。あまりにおいしい日当がゆえ、「あっち(警戒船業務)がメインの人が多い」という地元漁師の証言もある。この費用に、2年間で5億円以上の税金が投入されたという。

 話を整理しよう。

 沖縄防衛局が基地反対運動の説得工作や漁協に対して「日当」を支払うことが地元メディアの取材で明らかになった。タイミングとしては、漁業関係者に「警戒船業務」として「2万円」や「5万円」の「日当」を払う準備を進めているときだ。全国区のマスコミに火がつけば、「札束をバラまいて住民を懐柔しているのか」と場合によっては基地反対運動も一気に活気づく。防衛局や基地推進派からすれば絶対絶命のピンチだ。

 そんなとき、まるで救いの神のように現れたのが、日当2万円と弁当付きで、基地反対集会や座り込み運動のバイトをしているという「A氏」だ。「偶然」にしては、できすぎではないか。

 選挙になると、いまだに怪文書やネットの誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)などの「紙爆弾」が飛ぶ交うことからも分かるように、自分たちの悪い評判を覆い隠すのに最も効果的なのは、敵対する者たちの悪い評判を流すことだ。

 「反対派は日当をもらっている」という風説が流れたら、防衛局や基地推進派からすれば基地反対運動の評判が地に堕ちるだけでなく、自分たちの「日当」問題からも世間の目をそらすことができる。まさしく一石二鳥だ。

 また、これならばなぜ反対派がもらっているという「日当」が相場とかけ離れた「2万円」になったのかも説明がつく。

●世に溢れる報道や情報は何者かの「意図」が隠されている

 冒頭で申し上げたように、デマを流す者は、デマの中に己の感覚で「事実」と思しき要素をちりばめる。そこで想像してほしい。新基地建設にまつわる「業務」で2万円や5万円といった「日当」を支払うことが常識となっている人たちが、「反対派が日当をもらっている」というデマを流そうとしたとき、彼らの頭には、どんな「相場」が浮かぶのか、を。

 座り込みやシュプレヒコールは船長のような特殊技術ではない。工事用トラックや機動隊の動きに目を光らせているということでは、警戒船に同乗する「警戒員」とよく似ている。きっと彼らもそれくらいの日当をもらっているに違いない――。

 つまり、反対派がもらっているという「日当」が、世間の日雇いバイトの相場や、市民運動の「実費」と大きくかけ離れた「2万円」になったのは、辺野古沖の「警戒員」の「日当2万円」にひきずられている可能性があるのだ。

 いろいろ言ってみたものの、来週にでも『文春』や『新潮』に「A氏」のような人物が登場し、高江の座り込みバイトのおかげでウハウハです、なんて告白記事が掲載されるかもしれない。

 ただ、もしそうなっても、そこで語られる証言の細部にまで目をこらしていただきたい。週刊誌だけではなく、「告白記事」は総じて告白者の「意図」が隠されている。もちろん、単純に「謝礼が欲しい」から協力する人もいる。しかし、これまで記者をやってきた経験で言わせてもらうと、取材に協力することで、自分や自分が属する組織・勢力になにかしらの「得」を手にする人がほとんどだ。

 そこで思う。基地反対集会や座り込みのバイトで暮らしているという「A氏」の「得」とは果たして何だったのか――。情報操作の観点からみると、「プロ市民はバイト代をもらっている」という風評は非常に興味深い。事実なのか、デマなのかも含めて「日当2万円」報道の今後に注目したい。

●窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。

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