警備資料

アクセスカウンタ

zoom RSS 違法にクビにされても法律で救われない現実

<<   作成日時 : 2016/11/18 23:42   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

前回の記事(ブラック「クビ」が中小企業で横行する理由)では、次のような指摘をしました。大企業では社内に法務・人事といった管理部門が存在し、コンプライアンス意識も高いことから、社員が労働法に守られています。その一方、中小零細企業は、経営者側の歯止めをかける仕組みが乏しいといった実情から、社員が解雇規制などの労働法の保護を適切に受けることができないことが多くなってしまいます。つまり労働法は「ダブルスタンダード」状態にあるということを指摘しました。

■労働法で救われない理由は

 一部の人は違法な解雇(ブラック「クビ」)をされながらも、泣き寝入りしてしまう現実が、残念ながらあるのです。

 なぜ、このようなブラック「クビ」に対して、労働法では救うことができないのでしょうか。今回はその理由を詳しく分析します。理解を深めるため、ブラック「クビ」にあった架空の3人の事例で考えていきましょう。

Aさん〜Cさんは、いずれも違法な解雇であるブラック「クビ」にあった。その理由は深夜にわたるプロジェクトの打ち合わせに残業代が出ないことを指摘したら、「トランプショックもあるし、リーマンショックのように今後の情勢は不透明だ。なのに、お前は権利ばかり主張して仕事への積極的な姿勢がない!  もう明日から来なくて良い!」という意味不明なものだった。しかし、その後の対応はそれぞれ違うようだ……。
25歳 Aさんのケース(さっさと転職)
「ベンチャーならやりがいがあると思って就職したけど、あんな意味不明なことを言う社長とはきっとうまくいかないな。だったら見切りをつけてさっさと転職してしまおう」
Aさんは早速転職エージェントに連絡。翌週には面接、来月からは別の会社で働くことになった。
35歳 Bさんのケース(自分であっせん)
「あんな意味不明な理由でクビになるなんて……そんなに簡単にクビにできるのか? 日本の労働基準法は厳しいんじゃなかったっけ? でも法律のことは分からないから、まずはググってみよう……。どうやら、弁護士に頼んで裁判をする場合は、時間もおカネもかかるらしい。弁護士さんの所に相談に行くのも気が引けるし。ほう、『労働局のあっせん』というのがあるのか。無料で早いらしいから、自分でできそうだし、これをやってみよう!」
労働局のあっせんとは、労働局が任命した学識経験者であるあっせん委員が、会社・労働者の両方の言い分を聞き、話し合いを促進することにより、和解などによる紛争の円満な解決を図る制度だ。無料で利用することができ、イメージとしては離婚などの調停に近い。東京の場合、九段下にある東京労働局で申し立て可能である。

裁判官の印象は悪くないようだけれど…
Bさんは、「これなら不当解雇を撤回させられるかもしれない」と少しの希望を抱いて、あっせん期日に臨んだ。しかし、労働局のあっせん委員からは「長く争いを続けてもいいことないよ。まだ若いんだから早く終わらせて、次に転職した方がいいから」と説得されてしまった。Bさんは長く争ったのでは転職活動に支障が出ると思い、結局10万円の和解金をもらうことで会社と和解した。翌日以降、Bさんは、失業保険をもらいながら、転職活動に励んでいる。
45歳Cさんのケース(弁護士使って裁判所)
「あんな意味不明な理由でクビになるなんて…そんなに簡単にクビにできるわけないだろう。日本の労働法は厳しいんだから!  弁護士つけて裁判だ!  たしか法テラスに行けば相談は無料なんだったよな」
法テラスとは、経済的余裕がない人に無料で法律相談を行い、弁護士費用の建て替えなどを行う組織だ。また、労働審判とは、原則3回以内の期日で和解成立を目指し、和解が整わなければ「審判」という判断が下される裁判所の労働紛争解決手続きをいう。Cさんは法テラスで弁護士に相談した結果、普通の訴訟は数年かかるケースもあるということで、労働審判を申し立てることにした。
労働審判では解雇の不当性を主張した。裁判官の印象は悪くないようだ。ただ、審判委員からは「せっかく会社も話し合いに応ずるという姿勢なので、金銭で解決してはどうでしょうか。半年分の給料がもらえれば悪くないでしょう」と説得され、最終的には180万円の和解金をもらい、解雇ではなく会社都合で退職したことにして和解成立となった。

 以上のようなケースは現実によくある事例をデフォルメしたものです。これを見たうえで、なぜ、労働法で「救われない」人たちが居るのか考えてみましょう。

■制度として金銭的保障があるほうが合理的? 

 理由1:すでに転職を決めている(ある意味泣き寝入りの一種)

 退職を強要されたり、解雇を言い渡された段階で、すぐに会社に見切りをつけて、次の就職を決めてしまう、Aさんのような人たちがいます。このような方は、実態としてかなり多い印象があります。次の就職先が決まっているため、「もめ事を抱えたくない」という気持ちからわざわざ訴えないのです。本来訴えれば勝てるのに、時間も手間も掛けたくないから訴えられずに、「自分の権利を実現できない」というのはある意味泣き寝入りの一種と言えるでしょう。裁判をする必要がないのですから、労働法で保護するよりも、最初から制度として金銭的保障が定められているほうが、よほど保護になります。

 理由2:純粋な「泣き寝入り」

 泣き寝入りと言っても2パターンあります。まったく訴えないケースと、弁護士に頼まずに、あっせんなどで丸め込まれてしまった、Bさんのようなケースです。

 まず、まったく訴えないケースとしては、退職強要に応じて退職届を出したり、解雇されても訴えることをそもそもしない場合が多く見られます。これは、「会社と戦う」ことに抵抗感がある人、戦う気力を無くしてしまった人など、さまざまな類型があるようです。また、Bさんのような例は、本来は裁判をやればもっと和解金を取ることが可能でした。しかし、早く紛争を終わらせたいという気持ちから、極めて低額な和解をしてしまうケースも実際に多くあるのです(この点はまさに、濱口桂一郎執筆『日本の雇用終了』に多数の事例が紹介されている)。

わざわざ「会社を訴えよう!」と思う人は…
 このような「泣き寝入り」を防止するには、「弁護士に相談して、裁判をすればいいではないか」という意見もあります。しかし、わざわざ弁護士に頼んでおカネを払ったうえ、時間をかけて裁判をするのは、依然としてハードルが高いです。弁護士費用も低額化が進み、法テラスによる立て替えがあるとしても、費用がゼロではありませんし、敗訴リスクもあります。また、裁判も労働審判制度によりかなり早くなった(相談から3カ月〜4カ月程度で解決することも多い)とはいえ、弁護士との打ち合わせや、裁判所に出向く負担も少なくありません。

 もちろん、労働者側の弁護士や裁判所も、できる限り迅速に目の前の労働者を救おうとさまざまな努力をされています。しかし、これで救われるのは、わざわざ「裁判をしよう」という意欲を持っている離職者だけであって、そもそも戦う意思を失っている労働者を保護することができません。

 厚生労働省の労働相談における解雇の相談が4万件弱なのに対し、裁判件数は3000件弱と極めて不釣り合いな現状が、まさにこの点を物語っています。わざわざ「会社を訴えよう!」と思う人はかなり少数なのです(決して、労働者側の弁護士がおカネを取りすぎているとか、裁判を迅速にすれば解決するとかそう言う次元の話ではなく、紛争解決制度そのものの問題なのです)。

■会社へ戻る「フリ」をする? 

 理由3:裁判制度にムダが多い

 誤解を恐れずに言えば、最も本質的な原因は、「時間もおカネも掛けて弁護士頼んで裁判するのがムダ」ということです。というのも、日本の労働法においては、解雇を金銭で解決する制度がないため、裁判においては「解雇が無効である」と主張して会社と争うことになります。そして、仮に解雇が無効となったのであれば、解雇自体が「無かったこと」になるので、雇用契約がずっと残っていたことになります。そうすると、会社は解雇してから、解雇無効の判決が出るまでの賃金をすべて支払い、しかも、労働者は会社に職場復帰(復職)することになるのです。

 実際、解雇裁判においてはかなりのケースが金銭で和解をしています。しかし、今の制度においては、会社への復職を求めないと和解金額が大幅に下がってしまうため、戻る気がなくとも会社へ戻る「フリ」をしなければなりません。実際に、Cさんのように労働審判を申し立てるケースでは、「実はすでに転職先が決まっている」ということも多く見られます。ところが、そのことは隠しておく必要があります。つまり、制度上、仮に転職が決まっていたとしても「会社に復帰する!」という意思を見せなければならず、そのために相当の手間と時間がかかってしまう。これが、最大の問題なのです。

 また、手間という意味でも、仮に労働審判で解決せず、通常の訴訟となった場合、地裁・高裁・最高裁まで争うと、解雇された労働者は2年、3年、4年……長い場合、8年程度も裁判生活をすることになります。その間、労働者は貯蓄を切り崩したり、親族の助けを得たり、労働組合の「カンパ」をもらったり、アルバイトで生計をつないだり、場合によっては転職していることを隠しながら、闘い続ける必要があるのです。はたして、これは本当に「労働者を救う」システムといえるのでしょうか。また、そもそも、長年裁判で戦い続けた会社に戻りたいと本気で考えている人はどれほどいるのでしょうか。

 そこで、筆者は労働者がより気軽に金銭要求ができるようにするべきだと考えます。むしろ、この方が救われるのです。一見労働者の権利を弱めるように見える解雇の金銭解決により、労働者が救われるか救われるかについては次回、詳しく述べたいと思います。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
違法にクビにされても法律で救われない現実 警備資料/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる